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【セレス騎士団?】

 ギアの村に着くと村長が飛び出してきた。


「領主様、ご出産まことにおめでとうございます」

「ありがとう。ごめんなさいね、こっちになかなか顔出せなくて」

「いえいえ。このような辺鄙な村に領主様が直接お出でになるなど考えたこともございませんでした」


 まあ、前任が悪すぎたってのはあるよね。


「しかも領主様の治世になってから村人たちの暮らし向きも良くなる一方でございます」


 たしかに、まるでゴーストタウンみたいだったのが家は立て直した新しいものばかりになってるし、村人たちの着ているものもきれいになった。私は余剰食糧の買い取りについて素直に持ち掛ける事にした。


「なるほど。西の悪い領主が成敗され、貴女様がその地も治める事になった事は私たちの耳にも伝わっております」


 いやそんなんじゃないけどね。確かにパッソ侯は蓋を開けてみれば小悪党だったけど。それでも余剰食糧を買い上げることには賛成してくれた。


 でもね。その中に街道で売る用のポテチの売り上げが減ったから不良在庫化してたものがあるんだよね。これは私の失点だ。



「そんなわけで戻ってきました」

「エリザベス嬢、産後なんだからもう少し身体を労わって欲しい」

「そうですね。またぶっ倒れられても私が大変になります」


 みんな辛辣だ。まあ私の身体を心配してくれてるからこそ、ではあるんだけど。


「それでですねえ。これは魔道騎士団の案件と言うより、シフト再興に関する案件なんですけど」


 副団長にはぶっちゃけた説明のほうがいいだろう。鈴木さんからも大人を頼れって言われてるし。


「なるほど。王都からこのベースキャンプへの街道利用者を増やしたいと」

「魔道騎士団は現地で木を切ってその場で拠点作っちゃうし畑も作って自給自足できちゃうし、なんで後方から物資を送る必要ないじゃないですか。だから避難民キャンプを町の体裁整えて王都から商隊(キャラバン)を呼べるようにしたらいいんじゃないかな?って思いまして」

「でしたら町づくりはハニャス殿に主導してもらうのはどうでしょうか?トーケ殿もシフト男爵になった事ですし、この地を発展させてハニャス殿が爵位を賜ればバランスがいいかと」


 なるほど。


「副団長、考えてるのはそれだけじゃないのでしょう?」

「ええもちろん。いずれ貴女は団長の座を退くでしょう。陛下から魔道騎士団の指揮権も委譲されてますし、前の事件のように貴女が前に出て危険に晒される事は陛下もよしとしていません」

「まるで陛下の仰せを聞いてきたみたいにおっしゃいますね?」

「これでも元は側近でしたからね。だから後釜の騎士団長にハニャス殿を付けたいと思っているのですよ、陛下も宰相も、そして私もね」

「はあ?」


 聞いてない、っていう顔をするのはハニャス先輩だ。


「それともう一つ。確かに魔道騎士団は現地調達で進軍できますが、それでも限界はあります。例えば馬の鞍や武器・防具等ですね。今はまだ設立当時のものが使えてますが傷みも出てきてます。これを王都に居を構える商人から調達するようにしてはいかがかと」


 なるほど。でも私は王都の商人とは鮮魚と味噌醤油以外は付き合いないし、マリアのほうが和紙や薬の売り込みで商人たちと話をしてたから詳しいかな?


「私の伝手でよければ紹介しますよ」

「え?お願いしちゃってもいいんですか?」

「これでも元総騎士団長で魔道騎士団の副団長ですから。必要な装備のリストアップから王都の商人の選定まで。セレス伯から権限移譲の書面をいただければあとは全部請け負いますけど?」


 それはぜひともお願いしたいけど、費用捻出が大変そうだなあ。


「ナニ言ってるんですか。魔人討伐の報奨をまだもらってないでしょう?お産があったから陛下も保留にしてるだけで、騎士団を五年は運営できる程度の報奨金は出ると思いますけどね」


 ああそうか。あの魔人討伐は魔道騎士団の手柄になるのか。


「じゃあ副団長、装備もろもろお願いします。それからハニャス先輩は難民キャンプを街の体裁にすることを考えてみてください」

「もう一つ、これは越権行為に当たる提案ですがよろしいでしょうか?」


 ん?なんだろう?


「セレス伯爵家の騎士団をお持ちになられてはいかがかと」


 ふぁ?思わず変な声が漏れた。


「いやいや。伯爵位では騎士団持てないの副団長のほうがよくご存じじゃないですかあ」

「ええ、あくまで俗称のほうの騎士団ですね。伯爵位であれば最大千人の警備隊もしくは衛士隊を所有できます。そして西海岸の国防を任されるのであれば別枠で五百人程度の騎士の保有を陛下はお認めになると思いますね。まあ私の個人的な意見ですが」

「うーん街を守る歩兵の衛士隊千人と、沿岸警備に特化した五百の騎兵って言う感じですかね?」

「ええそうです。そして沿岸警備の五百騎は魔道騎士団と共にここを本拠地とすれば色々と解決すると思いますよ」


 魔道騎士団とこれから設立する(仮称)沿岸警備隊がそれぞれ五百で合計一千人。ハニャス先輩がここに街を作ったとして住民たちは騎士たちを相手にした仕事ができる。前世でも基地がある場所は軍人さん相手の街が栄えてたよね。街が活気づけば王都から街道を使ってやってくる商人も増えて通行税も上がる。


 確かに上手く回ればみんなハッピーになりそうだ。けど問題はここがセレス領から外れてる事だよなあ。


「警備隊の設立は時間がかかります。王宮に申請を出して許可が出るまでがまず審査がありますし、許可が出てからじゃないと人材を募れませんから通常五年はかかります。それまでには陛下はこの地をセレス伯に賜ると思いますね」


 根回しから始めないとダメか。でもシフトの警備をいつまでも魔道騎士団で行なうわけにはいかない。いくら指揮権を預かってるとは言え、この騎士団は国王のものだからね。


 なんか頑張るたびに考える事が増えていってる気がするなあ。



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