暴れ毛を鎮めろ!永久脱剣師、毛牧場へ出動
こんにちは!
今回も読んでくださってありがとうございます!
湊たち、再び温泉町フィロヴェルへ!
……のはずが、待っていたのは、まさかの毛!毛!毛!!
ふわもこ家畜「毛羊」たちと、ティラ=ノイ博士の暴走(?)をどうぞお楽しみください!
◆毛羊問題
牧場への道を進むと、ふわふわした白いものがあちこちに見えてきた。
「うわぁ……あれが、メーモフ……!」
リュミアが目を輝かせる。
広がる草原には、真っ白な毛をもこもこにまとった動物たちがのんびりと草を食んでいた。
見た目はほぼ羊。だけど、どこか神秘的な雰囲気をまとっている。
「魔素を帯びた羊……みたいなものか」
湊が興味深く視線を落とす。
そんな湊たちに、ティラ=ノイがテンション高く説明を始めた。
白衣の裾をばたばたさせながら、目を輝かせる。
「この子たちがフィロヴェル名物、【毛羊】だよっ!」
「毛質は超絶ふわふわ、軽量、しかも魔素耐性アリっていう神素材なの!
魔術師たちのマントにも使われる、奇跡の毛根……!!」
興奮しすぎて手をぶんぶん振るティラに、リュミアとガルツは少し後ずさった。
「なるほど……確かに、町でもメーモフ織のマントを見たな」
湊が頷きながら周囲を見渡す。
だが――近づくにつれて、違和感が湧き上がった。
……ぴりっ。
空気中に、魔素の乱れ。
そして、ところどころに、妙に毛並みの荒いメーモフが混ざっている。
ティラの表情が曇った。
「本来なら、もっと完璧にふわふわなはずなのに……っ!」
「最近、この牧場の近くに【剣】が生えちゃってさー!」
「そのせいで魔素が漏れて、大地も空気も汚染されて……毛根がっ、毛根がぁぁぁ!!」
手をわなわな震わせるティラ。完全に泣きそうだ。
湊は眉をひそめた。
「魔素汚染、か……」
ティラは真剣な顔で頷き、さらに語った。
「それでね、一部のメーモフたちが……【暴れ毛】になっちゃって、普通の柔らかい毛が、魔素で変質して、
毛先が硬く針みたいになって、勝手にびゅんびゅん飛んじゃうの!」
「しかも暴れ毛が体内に逆流すると、メーモフ自体も凶暴化するの!!」
リュミアが唇を押さえた。
「それって、特産品としての品質も、安全性も……」
「ズタボロだよおおお!!(泣)」
ティラが地面に突っ伏した。
「毛根が暴れて、特産品も消えて、メーモフたちも苦しむなんて……そんなの、私が許さないっ!!」
鼻息荒く立ち上がるティラ。目に宿った光は、もはや戦場へ向かうそれだった。
湊は、静かに拳を握った。
「わかった。剣の処理も、暴れ毛の処理も、協力するよ」
ティラはぱっと顔を上げた。
「ほんと!? 湊くん、毛根界の救世主っ!!」
勢いよく湊に飛びつこうとするティラを、ガルツが冷静に押さえ込んだのは、もはやお約束だった。
◆ティラからの正式依頼
牧場主との挨拶を終えたあと、ティラ=ノイは湊たちを小屋の裏手に連れていった。
そこには、臨時の研究テントと、毛羊たちの隔離柵が並んでいる。
ティラは白衣をばさりとはためかせ、気合十分で言った。
「というわけで! 湊くんたちには、お願いしたいことが三つありますっ!!」
湊、リュミア、ガルツの三人は並んで、まっすぐ彼女を見た。
「まず一つめ!」
ティラは指を一本立て、声を張る。
「暴れ毛化して手がつけられないメーモフたちの討伐!
……っていっても、なるべく殺さないでね? 毛根が本当にかわいそうだから!」
「できるだけ、か」
湊が苦笑する。
「二つめ!」
ティラは指を二本に。
「牧場近くに生えた剣の永久脱剣!
あれが毛根を狂わせる原因だからね! 全力で引っこ抜いちゃって!!」
湊は真顔で頷いた。
「了解だ。そこは俺の仕事だな」
「そして三つめ!」
ティラが三本指を掲げ、にやりと笑った。
「無事だったメーモフたちの毛の中から、《暴れ毛》だけを見抜いて永久脱毛!!
根っこから間違いなく潰すことで、毛根環境を改善するんだ!!」
「……毛を見極めながら抜く、か」
リュミアがメモを取りながらつぶやく。
「そそ! これ、湊くんの【マナ・スキャン】の最高トレーニングになるから!
毛根を読む目を育てるの、マジで重要だよっ!!」
ガルツが苦笑しながら言った。
「……つまり、また細かくて地道な作業ってわけだな」
湊は少し考え、そして顔を上げた。
「わかった。三つとも、やろう」
リュミアとガルツも、それぞれ静かに頷く。
ティラは顔を輝かせ、こぶしを突き上げた。
「やったぁーー!! 毛根と未来を救うため、いざ出陣だぁ!!」
フィロヴェルの空の下。
剣と毛と、想いを巡る新たな戦いが、静かに始まろうとしていた。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
ティラ=ノイ博士、相変わらず毛根愛が全開ですね(笑)
次回からいよいよ、暴れ毛(+暴れメーモフ)との戦いが始まりますので、お楽しみに!
これからも応援してもらえたら、とっても励みになります!
また次回も、ぜひ読みに来てくださいね!




