表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/25

剣士、再び脱毛の道へ――異世界スキル修行編

こんにちは!今回のエピソードでは、湊に新たな力【マナ・スキャン】が芽生え、その可能性に気づく場面をお届けします。

ただ力に目覚めるだけでなく、「それをどう鍛えるか」に向き合う湊たち。


◆ 未熟な力


フィーナの剣が根差す洞窟に、柔らかな風が吹き込んでいた。


湊は、森で見えた“流れ”のことを相談し、【マナ・スキャン】というスキルが発現していると知らされた。

今もその余韻が体の中を微かに巡っているのを感じる。


だが、フィーナはにこりと笑ったまま、ぴしっと指を湊の額に当てた。


「湊、あんたの【マナ・スキャン】、まだまだ未熟だよん☆」


「未熟……?」


湊は驚き、思わずフィーナを見上げた。


「うん。今のあんたは、大きなマナの流れは感じ取れる。でもね、細かい“流れ”とか“滞り”までは見抜けてないんだ」


フィーナは、空中に流れる魔素の線を指でなぞりながら説明を続ける。


「いい? 湊!」

フィーナはぴょんっと飛び上がると、空中でキラキラした指を振った。


「マナ・スキャンってさ~、ちゃんと鍛えれば、相手の次の一手がガチで丸見えになるんだよ!」


満面の笑顔で指ハートを作る。


「剣振るか~、飛びかかるか~、魔法ぶっぱなすか~……!

体ん中の魔素とか霊素がね、動き出すときに、使う部位でピリッてサイン出すの! それをキャッチできるようになるの☆」


くるくる回りながら、フィーナは続けた。


「しかもさ! ウソつこうとしたり、ビビったりしても、体ん中の流れって絶対ウソつかないから~、

“体も心も未来予知!”って感じで読めちゃうわけ! !」


最後に、ドヤ顔でウィンク。


「だから湊、ちゃんと鍛えなよ? あんた、せっかくレアスキル持ってんだからさ~! 伸ばさなきゃ超もったいないっしょ☆」


リュミアが静かにメモを取る横で、ガルツが腕を組んで唸った。


「……とんでもねぇ話だな。でも、それが自由にみられるようになりゃ確かに強力だな」


湊は黙って、拳を握った。


(勇者を救う旅を続けるには、この力を得る必要がある)


確かな闘志が生まれていた。


「どうすればマナ・スキャンを鍛えることができる?」


フィーナは満面の笑みを浮かべて、元気よく答えた。


「簡単だよ~☆ 細かい魔素・霊素の流れを、ひたすら“読む練習”をすることっ!」


「読む練習……?」


「そう! 滝をじっと見つめて、水の流れの乱れを感じ取るみたいに、魔素や霊素の細かい動きに敏感になる練習だね!」


フィーナは手をくるくると回しながら、さらに続けた。


「できるだけ多くの流れを感じて、異常なところを見極める。数をこなして、精度を上げるしかないっ!」


湊はごくりと喉を鳴らした。


「……でも、そんな都合よく、繰り返し練習に使えるものあるか?」


「うーん、それがね……」


フィーナが頬に指を当て、考え込む。


その時だった。


◆ 思い出された“あの仕事”


「…………あ!!」


湊は思わず叫んだ。


リュミアとガルツが驚いて振り向く。


「な、なんだよ、急に!」


「脱毛だ!」


「…………は?」


ガルツが本気で聞き返した。


だが、リュミアは目を輝かせた。


「……確かに!」

「脱毛って毛根の微細なマナを見極める作業ですよね!」


湊は勢いよく頷く。


「そうだ! 毛根を伝って毛にもマナは流れている! 微細な滞り、異常な成長……それを感じ取って、ピンポイントで処理する必要がある!」


フィーナは手をぱんと叩いて叫んだ。


「それそれ~☆ まさにそれが今、あんたに必要な修行だよ!」


「……いや待て待て、じゃあつまり、俺はまた……」


「マナを診て、毛を読む!!」


フィーナが元気よく宣言する。


ガルツが呆れた顔でため息をついた。


「まさか、また毛に戻るとはな……」


リュミアは真剣な表情で言った。


「でも、今度はただの脱毛じゃありません。

湊さん自身の力を鍛えるための、立派な修行です!」


「そうだな……」


湊はゆっくりと笑った。


「毛でも剣でも、根っこを読むのは同じ。だったら、全力でやってみせる」


◆ 旅立ちの決意


「でも……どこで練習する?」とガルツが首をかしげた。


その時、リュミアがぱっと顔を上げた。


「フィロヴェルに行きましょう!」


「フィロヴェル……?」


「はい。前にお世話になった、ティラ=ノイさんがいます。あの方、今も永久脱毛魔術の研究を続けているはずです」


湊の脳裏に、白衣のローブを翻し、毛根に情熱を燃やしていたティラの姿が浮かんだ。


「……あの、毛根に命を懸けてる変人か」


「ええ、毛のためなら全力投球です! きっと喜んで協力してくれるはずです!」


フィーナも楽しそうに頷いた。


「うんうん、ティラちゃんなら絶対乗ってくれるよ!誰かは知らないけど☆ 」


ガルツが渋い顔で呟いた。


「……あんまり想像したくねぇな……」


◆ 再び、道をゆく


翌朝。

森の出口で、湊たちはフィーナと別れの挨拶を交わしていた。


「んじゃ、また何かあったら遊びにおいで~☆」


「ありがとう、フィーナ。また頼らせてもらうよ」


フィーナはぴょんと跳ねて、にかっと笑った。


「湊、あんたは大丈夫だよ。根っこの想い、ちゃんと見抜ける子だから!」


リュミアとガルツも、それぞれ感謝を伝え、三人は森を後にした。


目指すは、再び温泉町フィロヴェル。


剣を抜くため、想いを護るため。

そして、自分自身を鍛えるため――。


旅は続く。

だがその歩みは、確かに、新たな成長へと向かっていた。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます!

湊が手に入れた【マナ・スキャン】。でも、力を得ただけではまだ不完全。

彼は仲間たちと一緒に、再び"原点"に戻りながら、少しずつ前に進もうとしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ