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剣聖教編⑤

剣聖教巡察部隊との激突が、ついに避けられないものとなりました。

今回は、湊たちが"信念"を抱きながらも、力の差を痛感し、初めて撤退を選ぶエピソードです。

仲間たちの絆と、それぞれが抱えた悔しさを、どうか見届けてください。

◆ 審判の刃と逃走の刻


「来るぞ!」ガルツが剣を構え、リュミアがすばやく魔導石を新たに起動する。


だが、エイシャの動きは――速かった。


「——《一閃・神令穿》」


その声と同時に、彼の双剣が白い残光を引きながら空を裂いた。次の瞬間、湊とガルツの間を、雷光すら弾き飛ばすような一撃が走る。


「ッ、ぐああッ!?」ガルツが咄嗟に受け止めた剣ごと、数メートル吹き飛ばされる。


「ガルツ!?」湊が駆け寄ろうとした瞬間、エイシャの二撃目が湊の足元へ飛ぶ。ギリギリで育剣を突き立て、身をそらす。


「……反応は悪くない。だが鈍い」


エイシャの声は無機質で、まるで死刑執行人のようだった。


「この男……ただの剣士じゃない。体術と剣気が融合してる……!」湊は血の気の引く感覚を覚える。


その瞬間だった。


(……あれ?)


エイシャの剣が振るわれたとき、湊は微かに——ほんの一瞬だけ、彼の体内の“魔素の流れ”が目に映った気がした。


(まるで……冷たい水脈みたいに、滑らかで濁りがない。でも、人間の魔素って、こんなに整ってるものなのか?)


一瞬の疑念が脳裏に残る。


その間にもリュミアが魔導石を切り替え、結界陣を展開。


「湊さん、ガルツさん、今のうちに離脱を!」


「離脱って……こっちから仕掛けたんだぞ!」ガルツが悔しそうに立ち上がるが、脚を庇っている。


「無駄な犠牲は要らない。これは戦争ではなく、信仰の審判だ」


エイシャは冷徹に言い放ち、再び構え直した。


湊は歯を食いしばった。


(逃げたくない。けど、今のままじゃ勝てない……この剣の動きじゃ)


「リュミア、転移魔導石はあるか?」


「簡易型ならありますが、発動までに時間がかかります……!」


「いい。俺が囮になる」湊が剣を逆手に構えた。


「おい湊! お前それ、マジで言ってるのか!?」


「こっちが全滅したら、何の意味もない!」


そう言い切って、湊は自ら前に出る。地面に手をつき、育剣を発動。


「俺は抜く。剣も、想いも、絶望も。全部だ!」


剣が地を割って生え、湊がそれを握り、エイシャへと突進する。火花が散り、剣気と剣気がぶつかり合う。


エイシャの一閃が迫る。湊は身を翻しながら、再び地面に触れた。


(今だ……動きを止める!)


「——育剣、連続展開!」


湊の手のひらから魔素が一気に地中に流れ込み、エイシャの足元を中心に、複数の剣が一斉に生える。それはまるで植物の茎がいっせいに芽吹くように、空間を制圧していく。


「……っ」


エイシャが動きを止めた。足元を囲む無数の剣が、その瞬間だけ彼の機動を封じる。


「リュミア!」


「今です!」リュミアの簡易転移術式が光を放ち、ガルツと湊を包み込む。


「——くそっ、後で説教してやるぞ!」


一瞬の光の中で、湊たちは姿を消した。


宿の前には剣の芽と焼けた空気だけが残され、エイシャは一歩も動かず、それを見届けた。


「……神敵、逃亡」


その静かな声だけが、朝の空気に溶けていった。


◆ エイシャ戦後


転移された湊たちは、森の中に姿を現した。

森の中で崩れ込むように倒れた湊を、リュミアとガルツが駆け寄って支える。


「……生きてるな。ほんと、無茶しすぎだ」

ガルツが息を整えながら言う。


「すみません……簡易転移なので、町からはかなり離れてます」

リュミアが息を切らしながら言った。


湊は地面に手をつき、うつむいたまま小さくつぶやいた。


「……あいつ、本気で殺す気だったな。なのに、まるで“感情がなかった”……」


「信仰で動いてるってだけじゃねえ。あれは……もう人間じゃない目をしてた」


リュミアも静かに頷く。


「……剣聖教は、想像よりもずっと危険です。“信仰の正義”の名を借りて、手段を選ばない。これは、もう一つの戦争ですよ」


森の静寂の中、湊は育剣で生やした白柄の剣を握りしめながら誓った。


「俺は剣を抜く。どれだけ否定されても……間違っていないって、証明してやる」


その夜、三人は焚き火を囲みながら、これからの旅路に新たな決意を抱いていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

圧倒的な力を前に、それでも剣を抜く意味を信じて立ち上がろうとする湊たち。

敗北ではなく、次へ進むための撤退。

彼らの旅は、ここからさらに深く、強く、試されていきます。

次回もどうぞご期待ください!

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