属性魔法
異世界から〝ブツリガクシャ〟と名乗る男を召喚したのだが、何とも変わった奴だ。
「ふむ……やはり、氷属性という魔法の区分は、本質的には不適当ですね」
氷魔法が不適当? まったく、今度は何を言い出したんだ?
「これはあなた方の言うところの、水属性の魔法をベースにして、熱操作を行う別の魔法を上乗せしたものですよ」
熱を操作する魔法? そんなもの、火属性の魔法しか存在しないのだが?
「そう、火属性。あれは熱操作を行う魔法を、氷魔法とは逆向きに使っている。同じ魔法の表と裏なわけですよ」
はあ……また始まった。よく分からない独り言が、もう、ほんと、めんどくさい。
「火属性にもベースとなる魔法があるはずです。想像するに、おそらくは気体を操作する魔法のはず。周囲から可燃性のガスを集めているのてしょう。火属性の魔法の威力が上がるフィールドがあると前に話されてましたが、それは可燃性のガスが空気中に多く含まれている場所なのではないでしょうか? そうだ、水属性の魔法は水に限定されず液体を操作する魔法だと思われますが、気体も含めた流体操作の魔法として、統一が可能な気もしています。まずは水属性の理解を深めるため、水以外の液体、例えば水銀を…」
――こうして、異世界転移した物理学者は魔法体系を根本から見直していき、それは魔法の発展に大いに貢献することになった。