蟲供
人の命を奪うというのは、直接的に殺す場合だけではないのだよ。…ん? ああ、そうじゃない。巡り巡って間接的に殺害だとか、戦争兵器を開発しただとか、そういうことを言ってるんじゃあない。
そうだな。例えるなら、お金だ。君が銀行の預金口座に、100万円を入れたとする。これは+100だ。では、100万円の借金を返済した場合は、どうだろう? -(-100)で、+100と同じと考えられるだろう?
この考えを人の命に当てはめると、人が生まれるのと、人が死ぬのを減らすのは、同義だということになる。そしてその逆に、人が死ぬことと、人が生まれるのを減らすことは、やはり同義になるのさ。
分かったかな? 長きに渡って続いてきた超少子化は、皆が別の選択をしていれば生まれてきたはずの、とても沢山の子供たちの命を、奪ってきたと言い換えられるわけだ。これはね、呪術的にはもう立派な〝蠱毒〟なのだよ。
毒虫たちを壺の中で喰い殺し合わせて、最後に残った1匹に超常の力を宿らせる外法。君たち100人は、それを何十億人もで行った上での、生き残りなのさ。さあ、それでは殺し合いたまえ。最後の1人と成り果てるまで。