お盆
「博士、今年の夏も暑いですねぇ」
「もうすぐ盆も終わる。そうすれば、放っといても今よりは涼しくなるじゃろう」
「まあ、確かに」
「それが何故かは分かっておるか?」
「ああ、1日の中で気温がピークアウトするのが、南中する正午の直後でなくって、午後2時頃になるのと同じっすよね」
「地表に蓄積された太陽熱の放射、新たに得られる太陽熱の減少。それらのバランスが逆転することも、確かに大きな要因ではあるがのう」
「え? 他に、何か理由があるってんですか?」
「盆の初めには、ご先祖様の霊がこの世に戻って来るじゃろう?」
「ええ、はい」
「これは放熱反応なんじゃよ。それで盆は暑さの頂点となる。あの世に帰る際には、逆に吸熱反応なため盆後は急に涼しくなっていく、というわけじゃな」
「なるほど! …それでは、神聖な場所が涼しいのも、絶えず霊が浄化されて吸熱されてるから、とかでしょうか?」
「鋭いのう。その通りじゃよ」
「やっと、今回のフィールドワークの目的が分かりましたよ。この山に眠る邪神をあの世に送って、地球規模の吸熱反応を起こすのが狙いですね」
「流石じゃな、理解が早い。わしらの開発したキルリアン振動砲。これが地球温暖化の対策に役立つとアピールする、絶好の機会というわけじゃ」