東西南北の神
4色の光が入り混じる幻想的な空間。四方の神の御力を借りた強力な結界が、魔術師の祈りによってこの場に張られた。邪悪な魔物たちはこれに阻まれ、中の人々に手を出せない。
「師匠、四方の神とは東西南北の神様のことですよね」
「そうじゃの」
「では、東と西の神は何処に御座すのでしょう? 北極や南極と違って、定点をイメージ出来ませんが」
「盛大に勘違いしておるの」
「え⋯⋯? あ、南極は寒いですもんね。分かりましたよ! 南の神は、赤道に御座すのでしょう!?」
「いや、違⋯」
「正体も想像がつきましたよ。ずばり、地球をぐるっと一周する長さの龍じゃないですか? そう、ウロボロスみたいな」
「弟子よ、全く違うぞ」
「ええー」
「四方の神は、特定の場所に在るわけでない。言うならば、星の導きと、力の流れの中にこそ御座すのじゃ」
「と、言いますと⋯?」
「南の神は、太陽からの光と熱が降り注ぐ中に顕現する。それ即ち、南方への昇天を意味する」
「なるほど」
「北の神は、南から北へと流れる力たる、地磁気に乘っていらっしゃる。それ故、地の神としての色も強い」
「ふむふむ」
「東の神は地球の自転、西の神はこれと逆なる星々の動きと共に有らせられる。2柱で対となる存在と言えよう」
「つまり、〝四方〟から神の力を借りる必要があるこの結界は、北半球でしか張れない。ということですね、師匠」
「地磁気が逆転でもしない限りはの」




