表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

ディストピア飯

 ここに1枚のプレートがある。高度に発達した科学技術の残滓(ざんし)、その産物の数々が配されたランチプレートである。人類の大半と、人類を除く全ての動植物が滅びてしまった地球で、世界を統べる機械が用意してくれる――ディストピア飯である。


 ドロドロとした流動食、それにタブレットとブロック状の固形物。そうした無味乾燥に思える品々の全てが――とても食欲のそそる香りを漂わせている。人類を管理する機械の仕事は完璧で、餓死という概念のある人間のため、栄養だけでなく嗜好性にも対応しているのだ。


 そもそも、香味や風味をもたらす化学物質の合成くらい、大したコストになりはしない。様々なフルーツの香りや、多様なスパイスの成分は当然に押さえてある。この流動食なんかは、そうした物質の恩恵でかなりレヴェルの高いカレーとして楽しめる。


 食感も色々と用意されていて、このタブレットにはグミの様な弾力がある。こちらのブロックは、サクサクのチョコバーといった感じだ。味と香りと食感の組み合わせは無数にあり、動植物に頼っていた時代には存在しなかった美味さえある。


 今回は注文しなかったが、培養細胞ベースの人工肉もレヴェルが高い。オルガノイドに血管新生を付与した程度の単純なものだが、風味も脂身も思いのまま。牛や豚に鶏はもちろんのこと、様々な動物のテイストを仕上げの培養で持たせられる。


 粉食文化については、むしろ滅びる前の世界よりも発展しているくらいだ。主要な穀物や芋類と同じ成分を作る人工藻類を培養し、それを乾燥して粉末にしたものが、寸分違わず小麦粉や米粉にタピオカ粉なのである。食材が限られるこの世界で、人類の食の創作意欲は粉物に集中している。


 ポストアポカリプスのディストピアにて、それでも人類が生きていけるだけの科学力。それは、栄養だけでなく美味しさにも向けられて然るべきなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ