タイムパラドックスの回避
タイムパラドックスの回避について書かれた、興味深い論文がある。その1章の要約となるよう、以下に抜粋しよう。
『過去にタイムトラベルをして、父親の代わりに自分が母親と結ばれた場合、その自分は生まれなかったことになるのではないか。この〝マーティーのパラドックス〟と呼ばれる矛盾は、極めて特殊な条件下では解消されます』
『自分という存在の元になった受精卵は、それを作ったのと同じゲノムの卵子と精子があれば、再現可能です。そして母親との交配では、自分の元になった卵子が排卵されたタイミングを狙えば、卵子については本来の歴史と同一になります』
『精子については、父親ではなく自分が作り出したものを使うことになるわけですが、それでも完全に同じゲノムの精子となる可能性はあります。何故なら、その精子に含まれていたゲノムの全てを、自分は受け継いでいるからです』
『染色体の乗換えが起こり、母親由来の染色体と一部を交換した上で、父親由来の染色体が同じ配列を維持している必要もあるため、極めて低い可能性だと言えます。また、母親のゲノムによっては、完全に可能性がありません』
『現実的な可能性がある唯一の条件は、常染色体と偽常染色体領域の全てをホモ接合で共有する、完全に純系な家系であることです。この場合、精子にY染色体が配置されるだけで条件を満たし、その可能性は2分の1と格段に高いです』




