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標本作製

 それは太陽の光を浴びてキラキラと輝いていて、彼の心を瞬く間に射止めた。ブルーとホワイトのマーブル模様がこれ以上ないほどに美しく、この唯一無二の宝石を永遠のものにしたい。彼はそう思った。


 宝石の美しさを引き出し、保つため、ある種の処理が施される場合がある。例えばサファイアであれば、加熱処理によって不純物が除かれ、鮮やかさと透明度が高められるが、彼がとった手段はその逆と言えるものだった。


 放射性の物質が発する多少の熱、これが美しさに変化をもたらし得ると考えた彼は、不思議な力で核分裂反応を加速させ、エネルギーをどんどん奪っていく。この手の処理は手慣れたものらしく、その動きに淀みは無い。


 並行して、コーティングが施されていく。その物質は表面に接した液体の水に溶け込んで、保持力の高いゲルに変化させる。内包される有機物の保存性も高く、繊細な色合いのグリーンもこれで保たれる。原石の状態から形を変えず、発見時の濡れ感まで保つのが彼の流儀だった。


 作業は最終段階に移った。流動的なブルーとホワイトのマーブル模様を保つため、特殊な流体を慎重に、しかし勢いよく(まと)わせる。どうやら上手くいったようで、雲の白さが自然に残っている。台風の渦巻きもいい感じだ。地球は彼のポケットの中で、太陽系の崩壊後も美しくあり続ける。

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