シンデレラエクスプレス(死語の世界その壱)(二百文字小説参加作品)
律子は総一郎と東京駅の新幹線ホームでしばしの別れを惜しんでいた。
「また今度の週末ね」
「浮気するなよ」
「そっちこそ」
誰も見ていないのを確かめ柱の陰で口づける。
「愛してる」
「俺も」
発車の音楽が鳴る。
「ああ!」
目の前でドアが閉じてしまった。
新幹線は最終だ。もう次は明日の朝までない。
「どうする?」
律子が深刻な顔で尋ねた。総一郎は苦笑いをして、
「延長いいですか?」
「バカ」
二人は寄り添い、ホームを歩き出した。