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名付けておいて、実は俺もこれはどうかなって思ったんだ

「あんたらは、何を考えているのよ」


久しぶりのダンジョン入り口前で、シャンナが俺達に低い声で凄んだ。

二日前のボロボロぶりを一切感じさせないいつものシャンナに戻っていたが、俺としてはあれもちょっといいなと、おっかないシャンナさんを見て思った。


今目の前のいるシャンナさんは、母親に叱られた幼少期の記憶を呼び覚ますぐらいの、おっかない顔付で俺とアレンを睨んでいるのだ。

しっかり脅えた俺とアレンは、シャンナから顔を背ける。


「ほら、こっち見る。あれは何?」


しかしシャンナは諦めない。

ずずいって感じで俺達を下から覗き込んで俺達の視線を自分に戻してから、次はダンジョン入り口を見るのよって感じで指を指す。


シャンナが指したそこには、今まで無かった、実は二日前から新たに設置されている看板がある。看板にはダンジョン名が書かれている。


それは、俺とアレンが考えた。

三十七層のボスを倒した快挙で、俺達はダンジョン命名権を手にしていた。今回王子接待クエストを受けるにあたって、俺とアレンはその命名権を活用してみたってことだ。


「王子に勝手に名付けられたら癪だろ」


「シャンナも、いつまでSSダンジョンなの? いい加減にSSって呼びたく無いんだけど? って、俺達にダンジョン名を何とかしろって言ってたじゃないの。それでもって、あなた方二人で良い名前を付けなさいよって、俺達に任せたよね」


「言った。確かに言った。だけどこれはない。四十階層て聞いていたのに三十七階層のボスを倒しても先が見えないんですけど――初見殺しの深淵迷宮。こんな馬鹿みたいな名前つけるとは思わなかったわ。なにこれ」


「これだったら名前を読んだだけで、底知れないSSダンジョンだって、初心者冒険者にはやばいってわかるだろ。そんな熟練冒険者な優しさIN?」


「レットの言う通り、わかりやすいっていいよね。で、長いんだったらさ、(シン)迷宮って略したりして呼べばいいじゃない?」


「だったら最初から深淵迷走迷宮アビュッスムベガスラビリンスとかにすればいいじゃないの。ああそれでもごちゃってるわね。深淵なる迷路アビュッスムラビリンスとかはどう? でもあなた方が迷走(ベガス)しすぎてるからベガスは絶対に入れたい気がする」


アレンと俺は同時に手をポンと打ち鳴らし、さすがシャンナと同時に讃える。

パッと神聖古代語が出てくるシャンナさん凄い。俺達の会話が全く分からなかった王子達には、シャンナが神聖古代語を解するから劣等感を刺激されて目ざわりに感じたんだろうな。


「じゃあ、今すぐあの間抜けな名前を変えましょう」


「王子接待が終わったらな」


「そうそう。あれは接待用なんだよ。接待が終わったらシャンナの案を取ろう」


シャンナの横にぽやっと立っていたリイナだが、彼女はあどけ可愛いを演出しているだけで普通にあざとい奴である。頭は回る。彼女は俺達の意図に早速気付いたようで、悪そうにニカッと笑った。次いで、シャンナを引っ張って、俺達にも聞こえる声でシャンナに囁く。


「ギルドに提出する報告書に、あの長ったらしいダンジョン名を書かなきゃでしょ。王子達に対するレット達の嫌がらせだよ」


「うわ、ちっさい。って言いますか、それは私達もでしょう? 馬鹿なの? あなた方は賢くなったら死ぬの?」


俺とアレンはシャンナが元気になってるのは嬉しいが、きっついなあ、と思った。

だけど、彼女は本気で人がいいんだな。

私は書かないわよ、とは言わない。


そして、俺達は王子達のパーティと共闘し合うつもりなんか毛頭ない。

ポーターみたいにダンジョンを案内だけしてやるつもりなのだ。

いや、ダンジョンポーターになり切るのならば、ポーターがギルドに提出する書類は、ダンジョン番号だけで良い。いやいやいや、冒険者も本当はダンジョン番号で報告書を作っても良いのだが、それだと他の冒険者に偉業が伝わらないという事で、ダンジョン名を書くのが主流なだけなのだ。


暗黒砦を制した。

天竜の間欠霊泉で宝玉を手に入れた。

ダンジョン名を数字で書くよりも良い感じだろ?


「レット。王子はレットとアレンが考えたダンジョン名を書くかな?」


普段はあざといだけのリィナの瞳が知的に輝く。

するとシャンナも、あ、と気が付いた顔となった。


「あ、そうか。レット達はこう考えたのね。王子達だったら自分達こそがダンジョン名を名付け直すと考えるから絶対に今の馬鹿ダンジョン名を書くと。なんて浅はか。我らが踏破せしことで、四十階層て聞いていたのに三十七階層のボスを倒しても先が見えないんですけど――初見殺しの深淵迷宮の命名権を与えられた。よって、フランドール国第二王子、勇者ハルバードの名のもとにこれを俺達の墓穴と改名する。なんて書くと思った? 書くもんですか。長ったらしい名前をダンジョン番号にして、未踏のダンジョンを制覇したみたいに取り繕うでしょうよ。あなた方の活躍さえもなかったようにしてね。ほんと、なんて、馬鹿」


俺の悪い笑顔は引っ込み、笑顔のアレンは少々固まってしまった気がする。

全く、シャンナさんが復活していてうれしいよ!!

長いタイトルはどうかなって、自分自身思います。


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