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自分が男だと粋がる奴こそちっせい

シャンナがフランドール国の伯爵令嬢さまで、第二王子の婚約者だったとは驚きだ。だが、彼女を裏切った王子が選んだのがあのピンクだったのならば、仕方がねえな、と俺は思うだけだった。


女を知らない男は、小柄で可愛い女は無害で無力で守るべきだと思いがちだ。

反対に、シャンナのように出来る限り自分の足で立とうとする女は、可愛げのない生意気な女と受け取るのだ。


それで選択を誤る。

依頼心と依存心が強い奴の相手は面倒なだけなのにな。


俺達のシャンナは俺やアレンに頼ったり面倒掛けるどころか、俺らを罵倒して尻を蹴とばしてくるような奴である。

…………。

やっぱ、婚約破棄は妥当じゃないか?

パパのお金で実績を買おう!!

なんて考える甘ちゃんにシャンナを扱えるわけがない。


俺はシャンナを振った男を見つめる。

ギルマスが用意したギルドの応接間のテーブルには、俺とアレン、そして、フランドール国の王子様とその側近二人が座っている。

もちろん左右に側近を侍らせ、真ん中に陣取るのは王子様だ。


この場の話合いにはギルマスはいない。

ついでにシャンナもリイナもピンクもいない。

泣きはらした顔したシャンナを見せて、あのピンクを喜ばせたく無い。ついでに、男尊女卑思考っぽい王子達を男だけの会合と呼び出せば、奴を俺達の良いようにはめ込めるだろうって狙いだ。


そんな俺達の企みが見えるからか、新副ギルマスが胃が痛いという顔で席についている。俺の妹の旦那になった前副ギルマスは過疎地の支部のギルマスになったが、それは左遷と見ていたが栄転だったかもしれないな。


さて話は戻すが、俺達にダンジョン探索のケツモチをしてもらわなきゃいけない初心者冒険者である王子様は、なんというか、お人形みたいだと思った。

パパが勇者バッチ買ってあげたくなる気持ちが分かるぐらいなのである。


整った顔立ちと蜂蜜色に輝く金髪に宝石みたいな青い瞳をしてるその尊顔は、妹が好んで(受け付け業務をさぼって?)読んでいた恋愛物語の登場人物のようである。

また彼の側近も、そんな感じのテンプレ達だ。

王子の右に座るのは、銀色に近い灰色の髪にアイスグレーの瞳をしたすました男。

左に座る、戦士を気取っているらしき粗野な振る舞いの赤毛の男。


どちらも王子のように整った顔立ちだが、小さくまとまってんな、というのが俺の感想である。

奴らは俺とアレンと比べると体格の時点で、こじんまり、なのである。

アレンが俺みたいなデカブツと言いたいわけではない。

アレンは俺よりも少々背が低く、俺よりも細身でしなやかな体形をしているのだ。

と、いうことで、華々しい王子よりもアレンの方が目立つし華がある。


「うん。やっぱ、うちのアレンが一番良い男だな」


「レットの方がだよ。君は誰よりもカッコイイ」


「そこ、急にキモい会話をし始めるな。我々は三日後のダンジョン探索についてのすり合わせをしているんだ」


銀髪の真面目だけが取り柄そうな男が、このゴミが、という風な口ぶりで俺達の脱線を非難してきた。やっぱ、小さい男だ。ちっさ灰色と名付けてやろうか。


「ジュノン。僕達は喧嘩をしに来たわけではない。彼らは僕達の様な教育を受けられなかった者達だ。僕達こそ歩み寄ってあげないと」


「ハルバード。お前はほんっとお人好しな奴だな。だが、だからこそ俺はお前について行こうと思っているんだぜ」


「ユーリス。君こそいつも頼もしいよ」


金髪王子達も、くっさい小芝居を始めた。

だが俺は彼等には少々感謝してしまった。

ちょっと前の俺とアレンもこんな感じに見えたのかもな、と考えると、我が振り直すきっかけくれてありがとうよ、という感じなのである。


「それで、君達は何がしたいのかな?」


アレンがとっても偉そうに言い放ったけど、自分こそちょっとさっきの振舞いを忘れたのだろうか。だが、俺もアレンを見習う事にした。


「君達はダンジョン探索の経験はどれくらいあるんだ? あるいは、今まで討伐してきた魔物について教えてほしい。それによって、君達へのサポート計画が建てられるからね」


「バカにするな!!俺はフランドール国の剣術大会で優勝している腕前だ。ジュノンは次代の宮廷魔術士長になるだろうと目されている。そして、ハルバートは世界を救う勇者であり、フランドール国の英雄王となるだろう」


俺とアレンは顔を見合った。

そして、教養高い王子達が聞き取れないように、高位神官でもマスターしているのは数えるぐらいだろう神聖古代語で喋ろうぜってテレパシーを互いに出し合った。テレパシーなんて無いけどさ。


「この王子、王太子じゃ無いよな? このガキがクーデターを試みる前に消しちゃおう、が、フランドール国王の真意か?」


「子供は親の鏡って言うじゃない? 馬鹿な子ほどかわいい親が賢い王太子を追い落とすための実績付けを思い付いた、かもしれないよ」


俺はニヤッと笑う。

アレンも同じ悪辣な笑みを俺に返した。


「失敗させてやろうじゃねえか」

「ガキに躾は必要だものね」


「お前ら。共通語を話せ」


切れたのは、将来有望な灰色頭だった。

俺達の会話が神聖古代語だと分かっても理解できなかったために、彼はとてもとても劣等感を抱いたから切れたのだろう。

アレンは人好きのする笑顔を返しながら、奴のプライドをさらに潰すだろう台詞を言い放った。アレンってやる時にはやるんだよ。


「すまない。シャンナの友人ならばこっちの方が馴染み深いと思ったんだ」


果たして、灰色だけでなく、赤毛も金髪も、綺麗な顔を歪めて真っ赤になった。

ハハハ、ぐぬぬってるぜ。

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