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聖女より魔女の方が可愛いに決まっている

完了させといてすいません。

レットとシャンナの会話とかもっと書きたくなって。

「勇者チームさーん。ギルマスが呼んでまーす」


間抜けな呼びかけ声に、本日のダンジョンの成果分を窓口で受け取っていた俺達は、一斉に声がした方へと振り返る。

いや、振り返ったのは、俺とアレンとちびっこ(リイナ)だけだ。

聖女シャンナだけは俺達の仲間で無い顔をしてそっぽを向いている。


なんでだ?


俺は彼女の視線を追ったが、何も無い壁だけだった。

彼女は俺達とは関係ない人を装いたいだけらしい。

俺は他人のふりをしている聖女の肩に腕を乗せた。


「何をなさるの!!」


俺の腕は思いっ切り撥ね退けられた。

ただし、俺はシャンナの身の捩り方に驚かされていた。なんだか優雅というか、酒場の女が酔っぱらいの手を跳ねのけるそれとは全く違うと感じたのである。俺も女のことはよくわかんないけど、なんかね。


「いやあ、俺も君が何をなさるの、だ。やっぱ君は聖女だったんだな」


「やっぱり聖女ってどういう意味よ」


俺達のパーティのシャンナは、外見が聖女よりも魔女よりだ。

彼女はとても美しいからである。

腰まである長い黒髪は艶やかで、瞳は闇夜に似合う金色にも見える琥珀色。

微笑む真赤な唇は、ベリーのように甘そうにトルンとしている。


そう、繰り返すが、彼女は物凄い美女なのだ。

だが美しい彼女は、派手顔すぎて悪人顔に見えるために、聖女として人の命を救うよりも刈ってそうにしか見えないのである。


「魔女に見えるから」


ダン!!


シャンナは情け容赦なく俺の足の甲を踏みつけた。

ちゃんと強化魔法かけた上でやりやがって。


「痛って」


「レットは何してんの。ほら、ギルマスが呼んでいるから、行こうよ」


「呼ばれてんのにシャンナが他人のふりして逃げようとしたからさ」


「ふ、ふん。私みたいな綺麗な女に触りたかっただけでしょ、あんたは!!」


(それはない。お前は美人だと思うが、俺には女じゃねえ)


「レットはシャンナみたいな人が好きなの?」


猫娘が俺を見上げる。

小作りの鼻と口元は人形みたいで、しかし猫らしく目は大きい。

その目はキラキラした金色が混じった水色の瞳である。

そんな可愛い顔立ちを際立たせているのは、顎までの長さの殆ど白のフワフワの髪の毛だ。

そんな可愛いだけの顔がきゅるんとした表情で俺を見上げているのだが、俺の胸は全く何も起きなかった。あざとさが過ぎるのだ。


「俺は癒し系が好きだ」


「レット。それは回復魔法使いの私を否定した上でのそれか?」


わあ、俺の背中がゾクゾクして来たヨ。

そんな怖い声が出るんだね、シャンナさん。


「俺達を否定したの君が先でしょ」


「だって、恥ずいんだもの。どうしてパーティ名が勇者チーム? いつまで勇者チームなの?」


「――たぶん、君かリィナが気の利いたチーム名を考えたら、かな」


「どうして私とリィナ限定なのよ。って、あんたらがネームセンス無いから勇者チームなのね。全く」


それに、俺はそのうちに抜けるからさ。


「ええと、だったら、私とリイナもいるんだし、四人を象徴する感じで考えていけばいいのかな」


「俺も入れてくれるんだ?」


「当たり前でしょお。あなたとアレンがファーストメンバーじゃないの」


やばい。

妙に子供っぽい喋り方で俺を見上げたシャンナが、俺の妹よりも幼く見えた。


つまり、可愛らしかった。


「――君はいくつだったんだ」

(そういやシャンナの年齢知らねえや)


「あらあ、こんな所にいらしたんですね!!」


少々耳障りな甲高いが甘ったるい声が俺達の間に響き、俺は声の主へと視線を動かした。

そこには、フワフワのピンク色の頭に水色の瞳をした美少女がおり、人好きのする笑顔を作って輝いていた。


うん、光属性魔法使いだな。

自分でエフェクトるって恥ずくねえか?


俺達が何も言わないことをいいことに、その初対面はべらべら喋り出す。


「お久しぶりです。元気そうで良かったわ。すっごく心配していたんですよ。殿下に婚約破棄された上にあなたは修道院に入らなきゃいけなかったのですもの。伯爵令嬢さまにそんな暮らしだなんて、とってもお辛かったでしょう」


シャンナは、ああ、笑顔が引きつってるな。

俺は左腕でリィナを持ち上げて抱き上げると、シャンナに向かって右手を差し出して無理矢理にでも彼女の手を握る。


「ほら、行こう。ギルマスが待ちくたびれてカッカしやがったら大変だ」


「あの!!私は、そこにいるシャン――」

「シャンナが俺達のチームで最高だよ。そう思うだろ、アレン」


俺がピンクの性悪フワフワをいないものとして行動しているのが分かったアレンは、俺が望んだとおりの受け答えをしてくれた。

ピンク頭だけでなく、フロアにたむろっている冒険者たち全員が魅惑されるような、それは素敵な笑顔を作り、誰にも聞こえる声、恐らく勇者が使える「神託の声」を使ってくれたのである。


「その通り。シャンナは最高だよ」


怖いよなあ、神託の声。

アレンが望んだ全員に聞こえ、聞こえた全員はその言葉がしばらく忘れられない、という、洗脳じゃないか? というスキルなのだ。

これでシャンナに害意を持っているあのピンクが何を言っても、しばらくは誰も相手にしないだろう。


俺は、もう大丈夫だ、と安心させる笑顔をシャンナに向けた。

シャンナは真っ赤な顔になって、俺の手から自分の手を引き抜く。

そして、元令嬢だと彷彿させるような可憐な仕草をした。

俺に掴まれていた左手に自分の右手を添えて、顔の前に持っていく。


「うえ。レット。なんかあなたの手、臭くない?」


「皮手袋のせいだよ。てか、この状況でお前喋んな」


最高だよシャンナさんになっているんだから、彼女が言ったセリフもアレンの神託の声と同じ効果をもたらすのである。ちくしょう。

しばらく俺は、手が臭い人、になるのか。

いなくなりたい。

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