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魔王の住処と黒毛狼族とオルマーニュ伯爵家

俺とアレンは自分の耳を疑っていた。

シャンナと共闘していた、俺と色合いが似ている獣人族の皆様が、なんとダンジョンから湧いて出て来たお方々らしいのだ。


シャンナこそダンジョンラスボスになられたのか。


俺は感慨深い気持ちとなって、自分の右肩の重みに視線を動かす。

シャンナは俺の右肩を枕にし、口を開けて少々間抜けな顔で熟睡していた。

俺はシャンナの口を左手で摘まみ、その阿呆みたいに開いてる(あっぽん)口を閉じてやる。


シャンナは起きもしない。

俺にこんなに無防備晒してんのは、彼女にとって俺はお父さんか。

ではお父さんだったら、娘の舎弟の面倒も見てやるべきか?

舎弟がダンジョンモンスターご一行様だとしても!!


俺は少年伯爵、バルメキアに顔を向ける。

きっと両目には、嘆願、な必死さも浮かんでいるはずだ。


「あの獣人達がダンジョンモンスターって、冗談だよな」


「うーん。どうでしょう。彼らはユイマン国のマカミ族と名乗ってます。祖父も父も戦禍か迫害でダンジョンに逃げ込んだ人達という認識でした。ダンジョン同士が繋がっているってこともあると祖父は申しておりましたから。そうなのですか? 僕はユイマン国さえもどこにあるのかさっぱりですし、ダンジョンについても詳しくありませんからね。なんせ、まだ十二歳ですから」


俺とバルメキアは朗らかに笑いあう。

内心で、まるでタヌキの腹の探り合いだな、苦笑ばかりだが。

バルメキアが自分が十二歳だとわざわざ言ったのは、俺達に深く探られまいと牽制してきただけだろう。

そして、ユイマン国など俺は今まで聞いたことが無い。


俺に学など無いのもある。

世界の全部の国名なんざ言えねえよ。


そこで俺は、世界情勢は押さえねばならない立場にいた事のある、元王子様へと顔を向ける。

が、アレンこそ俺を見ていた。


「ユイマン国って国、君も知らなかった?」

「ダンジョンって繋がっていたの?」


同時に声をあげた俺達は、互いの言葉によってしばし固まる。

だがすぐに、どうぞ、どうぞと互に譲り合う。

すると少年伯爵が割って入って来た。


「話を続けさせていただきますと――」

「いや、君だって聞きたいでしょ。ねえ、レット。まじ繋がってるの?」


「アレン、今さらか? 繋がっているも何も、坑道がダンジョン化したやつもあるだろ? それにダンジョンモンスターの地下ワームがダンジョン同士を繋ぎ合った事もある。それよか、俺はユイマン国について聞きたい」


「あ、そうか。さすがレット。それでユイマン国はね、神話世界にある国名だよ。地底に七十二も国があって、その一つがユイマン国という名だ」


「さすが、アレン。知識深み」


「レットこそ。やっぱ頼りになる」


「あの、いいですか?」


「ああ、いいよ。君も理解できたかな?」


「はい。ありがとうございます。それで、ですね、とにかくマカミ族とは話合いが可能でしたので、互に不可侵条約を交わしたという次第で。僕達は彼等を狩らない。代りに、ダンジョンに住んでいても良いが、僕達を脅かす行為の禁止。ダンジョンから湧き出てくる彼ら以外の魔物の処理の依頼、ですね。彼らが解体した魔物素材をこちらで引き取り、代わりに彼らが必要な物資を渡す。かなり友好的な関係を結べていました」


「それが、三年前の事件で台無しになってしまった、ということか」


俺が尋ねれば、バルメキアは暗い表情のままコクリと頷く。


「はい。ビソ村の若者の状態は何事かと聞きに行けば、マカミ族の年頃の娘がビソ村の青年達に襲われかけたから、という事でした」


俺はバルメキアの説明に頷きかけたが、すぐに気が付いた事を聞き返していた。


「それで関係が悪くなった、としても、三年前、だろ?」


「三年前は、この国に何がありましたか?」


「何って」


俺は右肩で間抜けな爆睡状態のシャンナを見やる。

また口が開いている、と、俺は呆れながらまた彼女の唇を摘まんで、そのあっぽん口を閉じさせる。結婚前のお嬢さんがそんな寝顔を男に見せてはいけません。

そんな(シャンナのお母さんみたいになってる)俺の横で、アレンの声が静かに響く。


「――もしかして、第二王子の婚約破棄、ですか?」


バルメキアはアレンの言葉に対して力なく微笑んだ。

あっぽん口

新潟弁です。口が半開きになっている状態を言います。

方言は「一言で済む」また「表現が的確」な時があり、「あっぽん口」もその一つだと思います。

広めたら標準語になってくれるかなと期待を込めて。

ちなみに、馬鹿な事ばかり言っている人を「もうぞこき」と言います。

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