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君は天然なのか養殖なのか だが俺の心は読んでくれ

「今日はよくやってくれた。君のお陰で三十七階層のボスを討伐できたよ」


爽やかな笑顔で俺の前に金の入った布袋を置いたのは、赤みがかった金髪に若葉色の瞳を煌かせた美青年である。

剣士という職種である彼は、国に認定された「勇者」でもある。

勇者というものは生まれつきではなく、華々しい活躍をしている冒険者に与えられる称号みたいなものである。

だがその称号持ちは国家間の移動に面倒な手続きも必要なく、新しいダンジョンが出現した時には優先的に内部に探索する権利を与えられる。


駆け出しは勇者称号を夢見るが、俺の様なベテランには、呪いにしか思えない。


だって勇者称号って奴はな、国家間同士で手軽に貸し借りされるし、新ダンジョンの出現には有無を言わさずぶち込んじまうぞ、というものじゃないか。


けれど国家間を自由に行き来できる、という特権は時には危険なモノであるので、人物評価はそれなりに厳しい。いや、内情に失望した力のある冒険者に反乱起こされないために、道徳的な奴を選ぶのか?


つまり、狼の爪と牙を持った従順な犬に、勇者称号は与えられるのだ。

俺の目の前の、勇者様、アレン・フェランのように。


俺は重みのある袋を手に取り、白金貨も入ってそうだなと考えて溜息を吐いた。


「ええと、遅れたホワイトファング討伐の報酬分も入ってるから。少なかったかな? 依頼にあったプラス部分が出せないみたいでさ。ホワイトファングに荒らされた耕作地じゃ、今年の冬は越せるかどうかじゃない?」


「もしかして、お前は自分の取り分を放棄してないか? いや、今回の潜りで得た金でお前があのくそ村の分を立て替えたのか?」


勇者は、えへ、という表情になったので、俺はしばらく勇者の飯や身の回りについて目を光らせねば、と頭にメモをする。

こいつは貰いが少ない時には自分の持ち分を減らし、パーティメンバーには約束分の金を分ける、という本気で人の良い馬鹿なのだ。

同じメンバーの、あの聖女のしたたかさを学んでほしい。

(聖女× 悪女〇 ごうつくばばあ◎って奴だぞ、あいつは!!)


「これからお見舞いに行くの? 俺も付き合っていいかな」


「いいよ。ついでに夕飯も一緒でいいか? ガキと二人ってのは、俺はどうしていいかわからないからな」


「またまた。君には妹さんがいるじゃない」


「ギルドの受付に座ったと思ったら、副ギルドと結婚して、アレイスって僻地のギルド支部に行ってしまった、あいつか? 最近会話も何もしてねえな」


「全く、レットは。それで寂しくてあの獣人を拾ったのかな? 俺も多分居合わせたら同じことをするけどさ。あの子じゃ俺達の旅には連れて行けないよ」


「――見捨てられもしねえな」


「だよね。だけどSSダンジョンであの子を守りながらの探索はきついぞ」


「だな。だが俺はガキを捨てられねえ」

(今ここでガキ付きの俺を追放しても良いんだよ)


「よし。縛りプレイもいいかもね。これも修行だ。魔王が軍団で町を攻めて来た場合は一般市民を守りながら戦わなきゃだし。うん、その予行練習だな」


俺は勇者をまじまじと見た。

こいつ頭イカれてんのか? そんな感じだ。


「どうした?」


「お前って凄いなあって」

(そのポジティブぶりは怖いくらいだよ)


「ふふ。俺はレットに褒められるのが一番好き。ずっと一緒だよ。君となら、絶対に魔王城だって攻略できるはず。どこまでも行こうね」


「そうだね」

(魔王城なんざ行きたくなんかないよ、ゴラアアア!!)


「渋くってさ。レットは俺の憧れって奴だな」


勇者、カッコ二十歳カッコ閉じるが、俺が渋くて憧れ?

俺は余裕そうに鼻で笑った。


お前、俺の妹が今二十一だって知ってんだろうが。おっさん扱いしやがって、ゴラアアア!!

ダンジョン37階層踏破の声掛けにホワイトファングの討伐話で、おや? と思った方すいません。

寒村でのホワイトファング狩りをダンジョン探索の合間にしてたんです、この方々。

分かりやすいようセリフ修正しました(2024/11/6)

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