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追放されたい俺だが、俺は王子を守るタンクだし

アレンどうした?


俺の中でフランドール国国王からの依頼はブッチすることは決定事項であるが、それでも犬族(リイナが言っているから。本当は狼族かもしれないが)の身の上については確かな調査をしておかねばならない。

俺は殺しに行くわけではなく、探りに行くだけのつもりだった。

だからこそ、ダンジョン内にいる住人達と俺の色合いが似ていることから、俺一人で確認に行くのが一番だとアレンに提案したのである。


それなのにアレンは一緒に行くと言い張り、今や置いてきぼりが嫌だと親に縋る子供めいた振る舞いをしているのだ。二十歳の大人の男が。

まじ、大人の大男のくせに子供みたいに抱き着いてきやがるから、いくらタンクな俺でも体にぶつかられた衝撃で咽てしまったじゃないか。


「今日は何だっていうんだよ。お前は」


わざわざ物々しい防音結界を張ったのが、リイナやシャンナに知られずに童心に戻りたかっただけだとしたら、俺は心置きなくお前のケツを蹴っ飛ばすぞ。

けれど俺は、アレンの後頭部を軽く叩いただけだった。


「どうしたんだ? ん?」


こんな子供を心配する父親みたいな喋り方、実の妹にさえしたことないぞ!!

だが、俺の献身は報われたようだ。

アレンが応えた。


「――だってさ、俺は勇者とは名ばかりの流刑人だ。俺はいもしない魔王を倒すまで旅が終わらない。野垂れ時ぬのを実の兄達に望まれている人間なんだ。俺と一緒にいれば、俺と一緒に野垂れ死ぬだけなのに、だけど、一人が辛い。俺はレットと一緒じゃないと辛いんだ!!」


「全く。お前は野垂れ死んだりしねえよ。最強のタンクがいるだろ。俺も勝手にどこかに行く気もねえ。お前を守ってやるって決めた途端に、百姓の小倅でしかない俺が、騎士に勝手に転職しちまったんだぞ。そんな俺がお前から簡単に離れるわけないだろ」


「嘘だ。君は俺を置いて行こうとしているじゃないか!!」


アレンは鋭い。

俺が追放されたがっている事に気が付いたのか。

それを今回のことになぞらえて訴えているのか?

本当のことで俺に追及して、俺に「そうだ」と言われた場合をアレンは受け入れられないから。


俺はアレンを抱き返す。

俺より少々背が低くて俺よりは確実に細い体を持つ、芸術品のように美しい男は、俺の腕の中では俺の弟にしか思えない存在である。


敬愛していた実の兄達に裏切られて、世界を彷徨うしかない憐れな元王子。

実兄達に傷つけられたから、彼は俺を兄に見立てて俺に縋りつくのだろう。


そんなお前の辛さに黙っているのに、俺は疲れてしまったんだよ。

いや、ムカついてんだよ、俺はお前の身の上にな!!


お前が俺を追放してくれるなら、俺はお前をこんな身の上にしたお前の兄達を、今すぐにでもぶちのめしに行ってやれるというのによ。

あいつらが改心すれば、アレンの旅は終わるんだ。


それで? ああ、アレンは俺が処刑やら投獄されての王冠など受け取らないな。


俺はアレンの背中を軽く叩く。

父親が幼子にするように。


「アレン、大丈夫だ。俺はずっといる。俺がお前を残して死ぬわけ無い。俺がお前の心を殺すようなことをするわけがない。安心して待っていろ」


「――わかった。だけど、犬は拾ってこないでね」


(拾ってたまるか。俺にはもう、お前という自分を仔犬と思い込んでいる大型犬がいるんでな)


俺は内心を口にせずに、アレンの背中をもう一度軽く叩くにとどめた。

それから俺は彼から体を放す。

アレンも俺から腕を外したが、そのすぐ後、泣き虫の弟ではなく熟練の冒険者の顔に彼は切り替わってしまった。


まあ俺も、だが。


敵襲、だ。


俺達は良くも悪くもそれなりな場数を踏んでいる冒険者である。

殺気をみなぎらせる存在に気が付かないわけなど無いのだ。

たとえ、間抜けにぐだぐだしていようとも。


うう、見られていたら恥ずいな。


「レット。奴らが向かう先は、俺達の野営、だね。それとも直線方向先にあるダンジョン、かな?」


「俺達に気付いていないのか?」


「俺の結界はシャンナ以上だ!!」


アレンは腰に手を当て胸を張る。

張り合ったところでシャンナさんは、君みたいにお隠れ用結界張らない。

そもそもあの人は、聖女の力の使用法を間違っている人だ。


「で、俺達の野営に一直線なあのお客さんは、愛息子の仕返しがしたいフランドール国王からの贈り物か? それとも盗掘を疑われているオルマーニュ伯爵が寄こした手の者か?」


「二人に限定するのはなぜ? ドラゴンライダー隊を保有しているのは、世界冒険者ギルドも、でしょう」


「ドラゴンライダー隊かよ。だったら、世界平和機構という名の、魔王復活を監視し合い情報連携するための各国が出資し合っている組織も、だな」


俺達は皮肉な笑みを交わし合った。


ドラゴンライダー。

俺の様な重装歩兵(タンク)どころの戦力では無い。

名前の通り、二足歩行の大型トカゲを使役する、騎士達の呼び名なのだ。


あれらは障害となるものは、人だろうが岩だろうが、潰す。

グダグダ回を明日に持ち越したくないので!!

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