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第7話 『未来への希望』

 王都の疫病の噂を耳にしてからも、森での生活は穏やかに続き、知恵を持った魔物たちとの交流がさらに深まっていった。


 癒しの力を受けた魔物たちが、新しい技術や知識を学び合い、互いに教え合うようになり、そのおかげで私も森での自立した生活が整いつつあった。


 ある朝、スライムのポルカが、私に森の果実や野菜を使った調理法を教えてくれることになった。

 彼は料理にすっかりハマってしまったらしい。

 スライムがどう料理するんだ!?という感じだが、器用に手の形に彼の体を変形させて料理を行っている。

 私の癒しの力を受けてからこのように意志を持って自分の体を操れるようになったらしい。

 

 彼は小さな体で果実を集めながら、料理に使える素材について教えてくれる。


「聖女さま、この青いベリーは甘いから、デザートにぴったりだよ!こっちの紫の実は、酸味があるから料理のアクセントになるよ!」


 ポルカの説明に従い、ベリーを集めて小さな火を起こし、料理に挑戦。

 焚き火のそばで果物を煮込むと、甘酸っぱい香りが漂ってきて、私の心がふわっと温かくなる。

 料理をしながら、ポルカが小さな体で喜んで跳ねる姿に、思わず笑みがこぼれる。


「うん、これなら美味しくできそう!」


 ポルカと一緒に作った森のベリーの煮込みは、今まで味わったことのない特別な一品になった。


 ──んまあああい!


 




 ******



 


 

 数日後には、物知りなゴーレムのガルムが、植物や鉱物の使い方についての知識を教えてくれることになつた。

 今日はもし私や魔物が体調を崩したときのための薬作りに着いて教えてくれるらしい。

 

 彼はこの森に生息する様々な薬草や鉱石の特徴に詳しく、それぞれが持つ効能について熱心に話してくれる。


「この黄色い花は、風邪をひいた時の薬になる。小さくすりつぶして湯に溶かせば、体を温める効果があるんだ」


 ガルムの教えに従い、私は花を摘み取り、薬草を調合する練習を始めた。


 彼のアドバイスを受けながら作った薬草茶は、ほんのりと甘く、心も体も癒されるような味わいだった。


 ガルムは私が作った薬草茶を誇らしげに見つめ、「聖女さま、立派だ」と褒めてくれる。


 その後も、森の植物を活用した調合に挑戦する日々が続き、私は薬草や森の資源を用いた様々な調合法を学び、徐々に自信をつけていった。


 森で育つ特別な薬草や木の皮などを使って簡単な軟膏を作り、傷ついた魔物たちをさらに癒す手助けもできるようになった。




 


 ******




 

 また別の日、リス型の魔物メルが、リスの仲間とともに森の木々を使った工芸を披露してくれた。


 彼らは小さな爪を使って木の実や枝を細工し、可愛らしい装飾品や簡単な道具を作っていた。


「これをこうやって削ると、丈夫な柄ができるんだ。聖女さまもやってみる?」


 メルが手本を見せながら教えてくれる通りに枝を削ってみると、見事なスプーンが完成。


 初めて自分で作った道具に感動し、自然と笑みがこぼれる。


 メルは「聖女さまの手、器用だね!」と褒めてくれて、リスたちと一緒に道具作りを楽しむ時間が広がっていった。


 夜になると、私の周りに魔物たちが集まり、それぞれの知識を持ち寄って暮らしに役立つ話をしてくれることが増えた。


 たとえば、ポルカが料理の工夫について話すと、ガルムが森の薬草や香りを加えるアドバイスをくれたり、メルが木々の素材の使い方を披露したりする。


 そして、寡黙な狼型の魔物シオンも、時折自分の知識を披露してくれるようになった。


 彼は狩りの名手で、森の危険なエリアや安全なルートについて熟知しており、私が出かける時はいつも見守ってくれる。


 ある夜、シオンがふと私に


「この場所は自分たちにとっても安息の地だ」

 

 と静かに語ってくれた。

 言葉は少ないが、シオンの思いが伝わり、私が彼に守られているだけでなく、シオンもここを安心出来る場所だと思ってくれてることが分かり嬉しくなった。


 こうして、魔物たちからの知恵や技術が積み重なるにつれて、私の森での生活はさらに豊かになっていった。


 自分の手で料理を作り、薬草を調合し、道具を作ることで、この場所が「本当に自分の居場所」だと感じることができるようになった。


 夜の焚き火を囲み、魔物たちが笑顔で話し合っている光景を眺めると、かつての王都での孤独な日々が嘘のように思える。

 彼らと過ごすこの時間こそが、私にとっての何よりの宝物だと感じる。


 この森の仲間たちとの交流は、私の心を満たし、未来への希望を感じさせてくれるものだった。

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