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第4話 『愉快な森の仲間達』


 ティオの助けもあり、私は森の魔物たちと少しずつ打ち解けていき、彼らの生活に寄り添うようになっていった。


 魔物たちはそれぞれ個性豊かで、彼らとの出会いが毎日を新鮮で楽しいものにしてくれる。

 何より、私の力を喜んでくれる魔物たちに囲まれていると、自分がこの森で必要とされていることを実感できた。


 ある日、私の前にふらふらと現れたのは、お茶目なスライムの「ポルカ」だった。体は小さな青いゼリーのようで、私の手のひらほどの大きさ。


 ポルカは、嬉しいと体の色が変わる特技を持っていて、私の反応に合わせて体の色が七色に変わる。


「こんにちは、聖女さま!会いにきたよ!」


 キラキラした目で私を見つめるポルカの姿に、思わず笑みがこぼれる。


 好奇心旺盛でおしゃべりな彼は、あれこれと質問をしながらぴょんぴょんと私の周りを飛び跳ねてくる。


「聖女さまって何する人なの?気になるなー!」


 小さなポルカが次々と問いかけてくる度に、私は一つずつ答えながら、彼が喜んでくれるのを見て心が温かくなる。

 ポルカの陽気で明るい性格は、私の森での生活をさらに楽しくしてくれた。


 数日後の夕方、今度はゆっくりとした足取りで現れたのは、体が土と岩でできた「ガルム」というゴーレムだった。

 どっしりとした風格があり、どこか落ち着いた雰囲気を漂わせている。


「聖女さまか?私はガルムといって、この森の長い歴史を知っている者だ。先日はありがとう」


 ガルムは物知りで、森の歴史や人間と魔物の関係についても詳しかった。

 森で何世代にもわたって生きてきた彼は、この場所に眠る伝説や植物についても豊富な知識を持っている。


「この森の土には、癒しの力を高める成分が含まれていると言われている。だから、君の癒しの力と合わせれば、より強力な癒しが生まれるかもしれぬ」


 ガルムが語る森の話に耳を傾けていると、ここが本当に特別な場所であることが実感できた。


 彼の豊かな知識を学ぶうちに、私はこの森についてさらに愛着を持つようになった。


 また別の日、私のそばにひっそりと現れたのは、無口な狼型の魔物「シオン」だった。


 彼は他の魔物たちと違って滅多に声を発さないが、私の存在を静かに見守り、頼りになる仲間として寄り添ってくれる。

 体は真っ白で、鋭い眼差しが神秘的な雰囲気を漂わせている。


「シオンは私を守ってくれるの?」


 そっと問いかけると、シオンは静かに頷き、その眼差しが優しく私を包むように見えた。

 

 どうやらシオンは、この森で一番の狩りの名手であり、森を巡回して他の魔物たちを守っているらしい。

 シオンが私の周りを守ってくれるおかげで、私は安心して森で過ごすことができるようになった。

 とても私に懐いてくれてるようでそのしっぽを振りながら私に寄り添ってくる。頭を撫でると喜んだようにニッコリする。可愛すぎる。


 こうして、ポルカ、ガルム、シオンや他の魔物達が仲間に加わり、私は彼らのために癒しの力を何度も使うことになった。

 彼らが癒されるたびに「ありがとう、聖女さま」と感謝の言葉をかけてくれる。

 その言葉は、私の胸に小さな誇りと自信を与えてくれた。


 無くしかけた自信が、少しずつ蘇っていく。

 王都で無力と見なされた私も、この森では確かに誰かのために役立っているのだ。

 自分が「聖女さま」として慕われていると感じることが、私にとっての救いとなった。


 さらに、ポルカやガルム、シオンと協力しながら、森での生活に必要な物資を集めたり、住まいを整えることもできるようになってきた。


 例えば、ポルカが小さな果物を集めてきてくれたり、ガルムが木の枝や葉を使って仮の小屋を作ってくれたりする。

 シオンは森を見回って道案内や危険な場所の警戒もしてくれた。


 ある日、ガルムが特別な乾燥葉を見つけてきてくれた。


「これは、火を起こすのに良い素材だ。夜は冷えるから、これで暖を取ると良い」


 その心遣いに胸が温まり、私は彼らとの絆を強く感じた。

 王都で孤独だった日々が嘘のように、今は彼らと力を合わせて生活している。私には今、森の中で信頼できる家族のような存在がいるのだ。


 夜になると、皆が私の周りに集まって静かに休んでいる。

 ポルカが楽しげにぴょんぴょん跳ね、ガルムが落ち着いた声で森の昔話を語り、シオンがそっと近くで寄り添ってくれる光景は、何よりも私を安心させてくれるものだった。


「ありがとう、みんな。私をここに受け入れてくれて」


 そっと呟くと、そばで休んでいたティオが目を開けて、穏やかに微笑んでくれた。


「君がこの森にいてくれることが、私たちの喜びだよ」


 ティオのその言葉に、心が温かくなり、私はここが本当に自分の居場所であると深く感じた。


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