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70話 対カリュー作戦会議

「は? あいつは捕まったはずじゃ?」

「自分もそう聞いてます!」

「どういうことですの?」


 以前、アブドラハを襲撃してきた海人の一部は捕らえられ、その後どうなったのかを知らされていなかったラフィ達は動揺している。

 俺は海人たちのその後については知っていたが、サターシャから告げられた名前には内心すごく驚いた。


「あなたたちには教えていませんでしたが、色々な事情で襲撃犯の海人達は騎士団で身柄を預かり、我々の監視下で生活してもらっています」

「だとしても、なんであいつと戦わなきゃいけないんですか?」

「ある取引で向こうから提示された条件があなたたちと戦うことでした。こちらしてもやりやすかったので、その条件を受け入れましたが、所詮は捕虜の言うことです。口約束ですし、あなたたちは断ることも出来ますよ」


「ですが」とラフィの疑問に淡々と答えていたサターシャは続ける。


「その条件を受け入れた理由はもう一つあります。あなたたちがカリューと戦った時のことをどのように捉えているのかは分かりませんが、たった一人相手に四人がかりでやられたまま終わりでいいんですか? 正直、私は指導者としても副団長としても、結果を覆せないままのあなたたちを中央へ送るのは不安です。これは、あなたたちの成長を測る良い機会だと考えました。それを踏まえたうえで、どうしますか?」


 サターシャは俺たちを見回しながら、刺さる言葉を言う。

 そんな風に言われたら、


「やるしかないだろ」


 ラフィが真っ先に答える。


「ああ、やるしかないよな」

「今度こそ、皆さんを守って見せます」

「私の成長を見せて差し上げますわ」


 俺たちはそれぞれの想いを胸に、カリューとの再戦を受け入れる。

 サターシャに心配をかけたまま、中央に行くなんてことはできない。


「分かりました。場所も時間も作戦も全てあなたたちで決めなさい。どれだけ成長したのか、結果で示してくれることを期待しています。それと、クラウ様。他の騎士たちが会いたがっているので、紹介させてください」




 *****




「さて、サターシャはああ言ってたけど、どうやって作戦を立てようか」


 俺たちは兵舎の一室を使い、どうしたらカリューを倒せるのか考える。


「先に言っとくけど、私は作戦とかそういう頭使うのは苦手だ」

「自分も同じく」

「私もですわ」


 おいおい、俺も集団での作戦は立てたことがないぞ。


「作戦とか、今までどうしてたんだ?」

「私たちは基本的に副団長、たまに団長の指示で動くからな」

「先輩方も作戦とか関係なく個人で強いので」


 ラフィとリオネルが説明してくれる。


「そっか。できる範囲で考えよう」


 自信はないが、ルインスとの修行で色々と対人戦については学んでいる。

 そういう知識を使って、やれることをやるしかなさそうだ。


「確認なんだけど、リオネルはカリューと一対一で戦いたいと思ってるのか?」

「え?」

「さっき、騎士の人たちに会ってきて、バッカスさんから、『あいつが絶対に逃げることが許されない場面で一対一でもやれるか試させてやって欲しい』って言われたんだけど」


 サターシャに連れられ、騎士たちへ挨拶に行ったが、ミャリアさんやミラジアさんのように会ったことがある人もいれば、バッカスさんみたいに初めて会う人もいた。

 まだ、あの場にはいない人もいるとのことで、会えるのを楽しみにしておこう。


「師匠がそんなことを……。はい。実はあの戦いで、簡単に吹き飛ばされてしまい、皆さんの役に立つことが出来なかったことが悔しくて。もし可能ならその機会をいただきたいです」

「みんなはどう思う?」

「いいんじゃねえか? そういう、一人一人の成長を見るための戦いなんだろ」

「お兄様があの戦い以来、ずっと鍛錬を続けてきたのを知っていますわ。私からもお願いします」

「じゃあ、そういう方針で作戦を立てよう」


 無数に作戦は考えられるが、その方向性は決まった。


「まずは、カリューの情報を集めたいんだけど、みんな、何かあるか?」

「情報って、戦い方とかか?」

「そうそう。苦手なこととか、得意なこととか、何でもいい。対策を立てるにはまず相手のことを知りたいんだ」


 前とは違い、今回はカリューのことをある程度知った状態で戦える。


「そうだな。私たちも強くなったけど、実力差って意味ではまだまだ大きな差があると思う。全力で戦ってるわけでもなさそうだし」

「前の戦いでは、ラフィとお兄様を相手にしながら、私の視線を気にする余裕もありましたわ」


 二人の言う通り、前はラフィの不意の一撃で何とか倒せたが、カリューの全力は分からない。


「あの衝撃波も厄介ですね。頑丈さに自信がある自分でも、何度も受けられそうにありません」

「だな。でも、お前が吹き飛ばされるくらいのやつを放つには、それなりに溜めが必要みたいだぞ」


 衝撃波を食らったリオネルとラフィがそれぞれ感想を言い合う。


「カリューは近接戦闘に優れた中距離攻撃持ち。それで、一番厄介なのがあの水だ」

「水ですか?」

「うん。俺が空気を冷やして水の振動を止めたら、弱まったし、衝撃波は、水の微小な粒子を目に見えないくらい細かく飛ばして、それに魔力で振動を与えることで発生させているんだと思う。水の振動が空気や物体に伝わり、強力な衝撃波として作用するって感じだ。守りにも使っていたし、水こそあいつにとっては攻防一体の最強の武器なんだよ」

「なるほど、そういう仕組みでしたか。でも、どうにかするのは難しそうですね」

「ああ、魔法で凍らせようとしたけど、水を回転させることでそれを防がれたからな」


 カリューの情報を話し終え、次の話題に移る。


「一通りあいつのことは分かったし、次は俺たちの戦い方とか出来ることを共有しよう。実力差がある以上、俺たちの連携が今回の戦いの鍵になると思うんだ」

「分かった。じゃあ私から……」




「実際に見てみないと分からないけど、皆すごいな」


 話を聞いた限りだとみんなの成長がすごすぎる。

「ふん、当り前だろ?」

「クラウにも私たちの成長を見せて差し上げますわ」


 ラフィとレオノーラはかなり意気込んでいる。


「自分は師匠の期待に応えるためにも結果で示します」


 リオネルも決意に満ちた表情でそう言う。


「おかげでなんとなくだけど作戦ができた」

「本当か? やっぱ、こういうのはお前に任せるべきだな」


 俺の中である程度の作戦が出来上がった。

 ラフィはそう言ってくれるが、初めてなので不安はある。

 俺は作戦の大筋を説明する。




「それぞれ危険が大きいけど大丈夫か?」

「ああ」

「もちろんですわ」

「はい」


 後は、実際に試してみて、戦いのときが来るまでに練度を高めるだけだ。




 ―――騎士団会議室―――




「あれがフリード様の孫か」

「前も思ったけど可愛らしいわね」

「おいおい、ちょっかいかけるなよ」

「ミラジア、言っておくけど、クラウ君は副団長のお気に入りだし、ラフィの友達だからね。手を出したら許さないニャ」

「ふふっ、分かってるわよ」


 サターシャがクラウを連れて出て行った後、騎士たちは会議室で自由に話す。

 ミラジアの不穏な発言に、バッカスとミャリアが注意する。

 ミラジアは魔法を使い、騎士団の男たちに苦い思いをさせてきたこともあり、要注意人物とされている。


「でもさあ、前に海人のところでカリューって奴に会ったことあるけど、あいつと戦わせるには早いんじゃないの?」

「心配? 珍しい」


 副団長から教え子たちをカリューと戦わせると聞いて反対したマーディは文句を言うが、ラーニャがそれを揶揄う。


「変に自信を失ってもらっても困るって話だ。特にリオネルなんかは気にしそうだけど」

「条件も自分たちで決めていいって話だし、水場を選ばない限り、圧倒的な差で負けるってことはないだろ。それに負けたって死ぬわけじゃねえ。レオノーラは分からんが、リオネルはそんなことで折れるようなタマじゃねえよ。それに、リオネルは前の戦いであっさり負けたからか、自信が足りてねえ。自分がどれだけ成長したか、この戦いで分かるだろうよ」

「レオノーラも案外図太いし大丈夫だろう」


 マーディの心配に対し、バッカスが自分の弟子は大丈夫だという。

 それに対し、ジャビールも自分の見解を述べる。


「ふーん、じゃあ後は後継ぎ君とラフィがどの程度やれるかだね」


 二人の実力を知らないマーディはそうつぶやく。


「教え子。私も欲しい」

「お前はその話し方を変えない限り無理だよ。ミャリアで我慢しておきな」

「ひどい。しくしく」

「ニャ!? 巻き込むな!」


 ラーニャはそう言いながら、ミャリアの体をいじりだす。


「マーディが弟子を持つなんて、成長したわね」

「やめてくれよ」

「ツンデレ。きも」

「ラーニャ、お前吹き飛ばすぞ」

「待った、待った。兄さんもラーさんもそこまでだ」


 お互いに本気で魔法を使おうとしたのをジャビールが止める。


「ラーさん、これでも兄さんはレオノーラのために指導書まで買って、師匠になろうと頑張ってたんだ。兄さんも言い方に気を付けろって」

「ビー、余計なことをいうな!」

「ビー君ナイス。いいこと聞いた」


 ジャビールは兄の秘密を打ち明けることで争いを治めようとする。


「さて、お前らそろそろ遊んでないで、訓練に行くぞ」


 バッカスの呼びかけにより、ようやく会議室は静かになった。


誤字・脱字報告ありがとうございます。

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