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5話 ジョゼフの悩み

 ―――ジョゼフ視点―――



 ジョゼフ・ローゼンは自身の書斎で頭を悩ませていた。


「クラウが成長しているのは嬉しいような、寂しいような気がするな」


 クラウは僕とエリーラの間に生まれた初めての子供だ。

 生まれてすぐのことは毎日のように泣き、目を離せばすぐに転げまわって、それはもう僕もエリーラも大変だった。


 危ないところに行くのが好きで、クラウが本棚の上によじ登り、飛び降りようとしたときには、本当に心臓が飛び出しそうなほど慌てた。

 何とか気づいて飛び降りる前に捕まえることができたが、エリーラにはクラウと一緒になって叱られた。


 それ以来、クラウが危険な真似をすることはなくなったが、大きくなってきても泣き虫は相変わらずで、エリーラと話し合ったこともある。

 泣き止まない日に外へ連れ出して気を引こうとしたら、今度は外を怖がって引きこもりがちになってしまった。

 少しでも外に興味を持ってもらえるよう絵本を買った結果、すぐに文字を覚えてエリーラと一緒に、クラウは天才だ、なんて喜んだこともあった。


 クラウに魔法が使えるようになってからは、ますます引きこもりがちになった。

 サターシャ殿が来るようになってからも魔法の使い方を教えてもらい、それを部屋で練習していた。


 そんなクラウだが、少しずつサターシャ殿やエリーラに連れられて外へ行くことも増え、最近では自分から外に出るようになった。

 リトも大きくなってきて、兄としての自覚が生まれたのかもしれない。


 成長を喜びたいところではあるが、サターシャ殿から街中で脅されていた子を助けるために自分から飛び込んだという話をされた。

 そういう勇敢なところは自分の息子ながら誇らしく思う反面、危険なことはやめてほしいと思う。


 僕は親としても戦うことに関しても未熟だが、家族だけは守り抜くと決めている。

 クラウは危険なことに首を突っ込むところがあるので、親として見守り、危険な行動は咎める責任がある。


 そうそう、そういえば、嬉しいことにこの前初めてクラウが自分の欲しいものを言ってくれた。

 これまで誕生日には欲しいものを聞いても興味なさそうだったのが、今年は設計図が描いてある紙を見せてきて、「これを作ってくれる職人さん知らないかな?」と聞いてきたのだ。


 仕事先の貴族の知り合いやそこで働いている人達に聞いて、腕の良い職人さんを紹介してもらえた。

 気難しいが腕は良いと紹介された職人さんが鉱人ドワーフだったのはすごく驚いたな。

 色んな人と出会っている僕でも、鉱人ドワーフは数回しか会ったことのない珍しい種族だ。


 酒とともにクラウの描いた設計図を見せて作れるか聞いたところ、興味を持ったのか「数日待ってくれ」と言われ、数日後に試作品ができたと手紙が来て、受け取りに行ったときに「今度設計図を描いたやつに合わせてくれ、感想が聞きたい」と言われた。


 気難しいって聞いていたけど、少し拍子抜けだった。

 クラウが嫌じゃなかったらと答えておいたが、クラウはぜひ会いたいと言っていたので、今度合わせてみようと思う。

 腕も良いというだけあって、金額もかなり高いものだった。エリーラにはバレないように気を付けないと。

 でも、金額どうこうじゃないくらい、クラウが初めて僕にお願いしてくれたことが嬉しくかった。

 逆にリトはおねだり上手なので、それはそれで将来が心配だ。


 さて、ここからが問題だ。

 クラウが設計図を作り、鍛冶師に依頼したものは、食べるために氷を削るものだったのだ。

 氷を食べるなんて考えたことなかったが、かき氷なるものは想像以上においしかった。クラウは料理の面でも天才なのかもしれない。 


 でも、問題はそこじゃない。


「このかき氷を売ろうと考えているんだ」


 なんと、あのクラウが自分からそんなことを言い出したのだ。

 そして、そんなことを言い出したのはきっと僕が頼りないからだ。


 この前の話だが、外へ興味を持ってもらうために、半月に一回は購入していた中央の新聞をクラウが持ってきて、


「父さんの仕事、この冷魔庫に奪われるかもしれないよ」


 そう言って、冷魔庫がどんなものなのか分かりやすく詳しい説明をしてきたのだ。

 この時の僕はさすがにクラウの考えすぎだと思っていたが、仕事先の貴族家の使用人にこの話をしたら、考える仕草をした後、「おそらく、契約は解消になるでしょう」と耳打ちしてきた。

 驚きのあまり、飲んでいたお茶をこぼして迷惑をかけてしまった。


 僕は気づかぬうちに自分の魔法に自信というかプライドみたいなものを持っていて、たかが魔道具に仕事を奪われるわけがないと高をくくっていた。

 全く己を恥じることばかりである。


 僕のプライドで家族がご飯を食べられるなら苦労しない。


 次善の策を考えなければと考えていた矢先にクラウからかき氷を売りたいと切り出された。

 クラウは賢いから記事を見ただけでこうなることを予想していたらしい。

 親として、商人の端くれとして情けない。


 僕の考えとしては子供がやりたいと思ったことは危ないことじゃない限りは見守りつつ、やらせてあげたい。

 なので、クラウがかき氷を売るというのも困ったことがあったらすぐに頼ることを条件に許した。

 子供の成長は早いというが、それをすごく実感している今日この頃だ。


 僕も一家の大黒柱として、次なる策を考えなければ。


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