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蒼天の真竜  作者: 逢河 奏
第一章
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007☆家と役目【真】

予定は未定ってことで予定無視して全く別の話を上げます。今回はシン視点の短い日常の話です。まあゆるいんで軽く読んでくださ~い。

では第七話をどうぞ~。

 キッチンと机。それがこの家の全てと言っていい。

 まず二つある戸口を遮るような中央に立派な木の机がある。そして折り畳みの椅子が三脚、机を囲むようにあった。大体席は決まっていて、キッチン側がオレ、裏口と呼んでる戸の方がシラン、表と呼んでる戸側がロウだ。

 あとは本棚。と言ってもいろんな物が入っているので混沌としているが、その本棚が裏口の手前の壁にある。だからシラン定位置はその近くだとも言える。ちょうど目線の高さ程の棚二段はシランの本が占拠しているのだから。

 以上が狭いと連呼される観月家の全てである。と言っても、シランの工房という離れが裏にある。因みにシランはそこで寝て、オレとロウはこっちの家で雑魚寝だ。

 そんな狭っ苦しい家をシランはあまり好きではないようだが、オレは結構好きだった。狭い方が何だか落ち着くし、掃除も楽だからな。

 と、言うわけで、掃除だ。


「シラン、散歩行ってこい。掃除すっから」

「……なんで追い出されるんだ。俺も手伝うぞ」

「でも狭いだろ? 一人でやった方が動きやすいの。嫌だったら工房の掃除してろよ」

「……わかった」


 とぼとぼとシランが出て行った。多分散歩だ。シランは結構マメだから工房は案外清潔にしてある。まあ寝床でもあるし、当たり前か。結局やることがないからぶらぶらして来るのだろう。


「一時間くらいしたら良いからなー?」

「……適材適所だよな」


 と返事なんだかよくわからないことをぼやきながら行ってしまった。まあ、多分聞いてただろう、と判断する。因みにロウはお仕事で夕方まで帰らない予定だ。

 ……よしっ。


「やるか」


 オレは意気揚々と腕捲りをした。


☆ ☆ ☆


「珍しくないけど珍しいことしてんな、お前」

「お、ハンダじゃん。なんだ?」


 砂やら埃を外に掃き出しているところに声がかかり、振り返るとムサイおっさんがいた。まあハンダだけど。


「いやぁ、掃除なんてやんねえからな。マメなことだ、と思ったんだよ」

「なんだとー? 掃除しないなんて病気になるぞ?」

「そこまで不潔にはしてねえよ! でもまあそうやってちょくちょく掃除するのは偉いな、と」

「三人も出入りすんだ。ちゃんとやんないとな。スズさんなんて毎日やってたんだぜ? オレはそこまでは出来ねえよ」

「でもお前仕事があるんだし、いつも家にいられたスズさんと比べんでも……」

「いーや、やっぱり頑張んないと。家の管理はスズさんに託されたオレの仕事なんだからな!」

「……主婦対主夫か」

「あ?」

「やぁ、なんでもない。とにかくあんま根を詰めるなよ。お前のおかげで依頼の回転が随分と早くなったんだ。お前に倒れられると俺がどやされるんでな……ほどほどにな、頑張れよ」

「おう!」


 満面の笑みで応えると、ハンダもにっと笑った。ハンダはオレより少しだけ背が高い。それが何だか少し安心するのは何故だろうか。

 そんなことをハンダの後ろ姿を見送りながら思っていた、が。


「おおっ。掃除掃除……」


 我に返ると慌てて掃除を再開したのだった。


☆ ☆ ☆



「綺麗だな、家!」

「お、わかってくれるかロウ。そうだぜ、今日はちょっと久々に掃除したんだ」

「ありがとーシン」

「良いって良いって」


 何だか照れくさくて頭を掻く。ロウは素直に感心するように黄色の瞳を輝かせてオレを見てきた。恥ずかしさを紛らわすようにシランに話を振る。


「いつものことだよな、シラン」

「そうだな、お前がいつもやってくれていることだ、いつも一人でな。本当にご苦労だ、感謝している」


 あ、あれ? やたら早口な上に険のある言葉に、驚いてシランを見返してみるが、なんだか目を合わせてくれない。しかもいつもより不機嫌度が上がっているような気もする。あ、あれぇ?


「し、シラン? ……なんか、怒ってる?」

「怒る? 怒るわけないだろう。いつも一人で手早く綺麗にしてくれるシンを有り難く思っている」

「いや、でも、怒ってるだろ? なあ、なんか悪いことした? オレ何かした?」

「だから怒っていない。俺は手伝っていないからな。お前のおかげだ。だからお前はロウに感謝されるべきだ」

「あっ、あっ、追い出したこと根に持ってるな! なあそうなんだろ? ごめんって、言い方悪かったよって、だからねちねちと責めないで!」

「責める? 責めるわけがないだろう? 俺は何もしていないんだからな」

「うわー、シランが壊れたー」

「シンっ、ロウ今度は手伝うぞ!」

「え? 別にいいけど」


 急にロウの言葉が割り込んできたことに不意をつかれついつい普通に了承してしまった。でも一瞬で後悔した。なぜなら左に座る人から凄い不機嫌オーラがオレを襲ったからだ。


「……何故俺は追い出して、ロウは手伝わせる?」

「ああ! やっぱりロウはいいよ、仕事大変だし!」

「シンも仕事大変だぞ?」

「そうだ、お前は──」

「あー!」


 大声出して無理矢理二人を止める。気持ちを汲み取ってくれたらしく、二人は大人しく黙った。


「わかった。わかったから落ち着け」

「……」

「なんだ?」


 とりあえず落ち着いたようなので話す。


「まずシラン。シランは工房もあるし、家のことは良いよ。こっちはこっちで寝てる組でやるから。……ダメか?」

「……そうか。わかった、そうしよう」

「じゃあ今度はロウもいる時に掃除しようか。ロウもそれでいい?」

「わかったぞ。ロウ頑張る」

「……ふぅ」


 収まったようだ。何だか疲れたなー、と思う。シランは生真面目だからな、何だかんだで気にしてたのか。でもまあこれで一件落着ということで。


「飯にしますかー」


 とまた腕捲りをすると、キッチンに向かったのだった。


「……お前は働き過ぎな気がする」

「シンお仕事好きなんだよ」


 そんな言葉を背に受けながら。


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