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絶滅危惧種の魔法使い

作者: 次郎

─────2009年12月25日

 おりしもクリスマスの日に国際魔法保護連合(IUCM)により絶滅危惧種に認定され、地球上にたった一人の魔法使いになった少女がいた。彼女の祖母が未明に他界したことによる。魔法使いの純血種は彼女エバスティン・ガーランドだけになった。

 病気だった祖母は故郷イギリスから遠く離れた日本での医師手術を受ける予定で一年前に来日していたが間に合わなかった。彼女自身がそれを拒んでいたからである。結局自分の魔法でも治療できなかった祖母は失念のうちに息を引き取った。

 こうして、エバには東京近郊の住宅街に位置する洋館にしばらくひとり住むことになった。

 しかし彼女の自由は制限されていた。国際魔法保護連合(IUCM)は彼女の絶滅回避のためにボディーガード、SP、執事、家政婦、家庭教師、料理人などを派遣して、彼女を表立って擁護していたのだ。何不自由ない生活を滞在国が保障し、そんな彼らの尽力にも彼女はいい加減うんざりしていた。


 ある日、特別野外活動と称して家庭教師と連れ立って近くの公園に向かった。徒歩で。しかもSPたちの護衛付きでそれは物々しい大仰なものだった。

 だが、エバは一人になりたかった。

 そこに都合よく走り込み中の高校女子陸上部員たちが通りかかった。三十人ほどの群れが通り過ぎた時、エバの姿はなかった。家庭教師やSPたちは焦った。彼女に何かあれば国際的損失として糾弾されかねない。一方エバはおり良く女子部員にまぎれて脱出に成功していた。特に目的もなかったが自由が欲しかった。同じぐらいの年の日本人とも仲良くなって学校でのびのびと勉強して教師資格を得るのが彼女の夢だった。窮屈な生活に嫌気が差していた。

 今、エバはドキドキしていた。来日して1年、祖母の看病に明け暮れてあまり日本を意識していなかった。日本語は家庭教師から教わっていたので問題なかったが、出歩くのは稀だった。

「コ、コンビニ・・・エンス・・・ストア」彼女の目の前に立ちはだかる大きな店舗がそれだった。「先生、日常生活品がなんでも揃ってるお店って言ってたけど、よし・・・入ってみちゃおう」

 好奇心に押されてコンビニのドアをくぐった。


 客は数名、カウンターでバイトの店員がレジ打ちをしていた。エバは商品棚の間を右往左往して見知らぬ商品を見て楽しんだ。そのうちに、おいしそうなニオイにつられてカウンターによろよろと近づいた。それはケースに入った暖かそうな肉まんのニオイだった。

「美味しそう・・・」

「肉まんですね。お一つでよろしいですか?」

「あ・・・いただけるの?」

「もちろん商品ですから」

 手渡されるや否やエバはがぶりと暖かい肉まんにかぶりついた。香ばしい具材に思わず笑みがこぼれた。

「あの・・・お代を先にお願いしますね」

「んぁ、むもぐもぐ・・・お代って?」「肉まんの代金です」「エバ、お金持ってない・・・」「はぁ?無銭飲食かよっ!」

 店員は大声で荒らげた。話は平行線のまま警察を呼ぼうとする店員に

「俺が払うッスよ」と待っていた客の一人が名乗りを上げた。青年はエバを見るやーーー一目ぼれというヤツかーーー守ってやりたくなったらしい。

 エバはその青年に連れられて店を出た。

「あ、ありがとうございます」エバは残った肉まんを握り締めながら頭を下げた。「あまりに美味しそうだったものでついはしたない事を・・・」

「日本には旅行で?」青年は気にしないでというそぶりを見せて尋ねた。

「イギリスに住んでたんですけど1年前に日本に、今は組織の方がごたごたしててそのまま日本に足止め状態なの」組織とはもちろん国際魔法保護連合(IUCM)だ。エバは監禁に近い状態に嫌気が差して散策中に抜け出したことを青年に話した。

「え?じゃあ、地球最後の魔法使いって君のことなの?」と驚く青年。「すげぇーまさか逢えるなんて思っても見なかったよ、と、とりあえず握手握手」ぶんぶん。


 青年とエバはさも嬉しそうに自己紹介しあい、彼が魔法使いに興味があることなど彼女に話した。

「ねぇ記念に何か魔法見せてくれない?」もうワクワクが収まらない勢いでエバに頼んだ。

 エバは「・・・ごめんなさい、ダメなの、できないの」と呟いた。

「あ、やっぱいきなりじゃまずいよね・・・ごめん」「ううん、そうじゃなくて・・・」

 その時、黒い背広の男たちが二人を取り囲んだ。そのうちの一人が青年を後ろ手で拘束し、無線で連絡していた「絶滅危惧種確保、同伴の日本人拘束完了、迎えを頼む」

「ちょ、何するんだよ・・・ちょっと話してただけじゃねーか!」

「その人に乱暴しないで!」黒服にすがり付くエバに「大丈夫です。一時的拘束です。問題なければ解放します」

 エバは後ろめたい眼差しを青年に向けて黒服連中と一緒にその場を後にした。


 その後青年が黒服に詰問された記録文書より抜粋─────

─────本件に当たって地上最後の絶滅危惧種に認定された魔法使いが「魔法を使えない」事実に関して情報の漏洩の可能性なしとする。

はじめての投稿です。執筆もはじめて(ぉ

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