間話「いつものまもんまもんじゃね?」
――青森某所。
「まもんまもん! まもんまもんまもんまもんまもん!」
「ああ? 天照大神から手紙だって?」
「まもんまもん!」
夕方、畑仕事を終えて家に戻ってきたサマエルにマモンが手紙を持って駆け寄ってきた。
「…………まったく。新たな神々なんて放っておけば良いのに」
天照大神の役割はサマエルも知っていた。
彼女がせっかく楽しい時間を過ごしているのに、それを手放さなければならないことを残念に思う。
「かずたんのことを任せる、か。私も忙しくて青森からなかなか出られないんだけどな」
毎日、サマエルは一登とメッセージのやりとりをしているし、アップした動画にコメントをくれるなどの交流もある。
しかし、青森と向島市では離れ過ぎているので、頻繁に会いに行くことはできない。
サマエルならば、数分で向島市に行くことはできるが、マモンたちの面倒を見なければならないのでなかなか自由な時間がないのだ。
「さまたん様が本気を出せば、新たな神々などワンパンでまもんまもん!」
「――ワンパンは無理だろ」
「まもんまもん! そんな謙遜をせずとも! 絶望の神程度ならば、ワンパンでまもんまもん!」
「……うーん、ワンパンは無理だと思うんだけどなぁ。負けることはまずないだろうけど。ていうか、私は新たな神々にはノータッチだから、そういうのは別に良いんだよ」
サマエルは、サタンと戦い敗北してから現役を退いている。
今さら新たな神々と戦うつもりもない。
ただし、サマエルたちの仲間や世話になっているおじいちゃんおばあちゃんたちに迷惑をかけるようならば、話は別だ。
全力を持って排除しよう。
「――しかし、新たな神でまもんまもん」
「なんだよ?」
「マモン的に、愛の女神こと愛ちゃんとは仲良く平気平気しておりましたが、他の新たな神々はどうも好きになれず。対抗策として、新たなまもんまもんを結成しようと思ったこともありまもんまもん」
「――新たなまもんまもんってなに!?」
「それは――まもんまもんでまもんまもんなまもんまもんですとも」
「いちばん気になるところが伝わらねえ! ちょ、まもん語じゃなくてちゃんとした言語で説明してくれない!?」
「――まもんまもん」
「だからまもんまもんは便利な言葉じゃねえんだよ!」
ぜーはー、とツッコミに疲れて肩で息をするサマエルは、もういいや、と長靴を脱いで家の中に上がる。
「さまたん様、どうぞお先にお風呂に。その間にまもんまもんと料理をしておきますので」
「……今日の夕食当番は私じゃなかったっけ?」
「まもんまもん! さまたん様にはどんと構えて、一番風呂にお入りいただき、ビールを飲んでいただきまもんまもん! け、決して、こっそり案件の打ち合わせをしたいから飲んで寝てもらおうなどとは考えていまもんまもん!」
「…………お前さ、魔族のくせに素直すぎるだろう。全部、口に出ちゃってるじゃん」
「――まもん!?」
「ていうか、隠れて案件を受けやがったな! この間も、畑に関係ないよくわからん企業の案件を受けようとして揉めたのを覚えていないのか!」
「今度は平気でまもんまもん!」
「信用できるか、見せてみろ!」
サマエルはマモンのパソコンを広げメールをチェックする。
するとそこには、とある食品会社からメールが届いていた。
「――マジで案件じゃねーか!?」
本当に案件が来ていたことにサマエルは震えた。
「って、よく見たら、この案件まもんまもんちゃんねるの方だし!」
サマエルは、マモンにだけ案件が来たことにショックを受け、ちょっとだけ泣いた。




