表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/1080

エピローグ1「自業自得じゃね?」





「くそっ、くそっ、くそぉおおおおおおおおおお! どいつもこいつも僕を見下してぇえええええええ!」


 三原優斗は自室で大暴れしていた。

 本棚を倒し、ベッドをひっくり返して、呼吸を荒くしていた。


 原因は、由良夏樹にあった。

 どこで嗅ぎつけたのかわからないが、杏を唆して、夏樹から小梅を奪おうと企んでいた矢先に、どこからともなく現れた夏樹に殴られた。

 それだけならまだしも、夏樹はあろうことか、倒れている自分に見向きもせず杏と話を終えるとどこかに立ち去ってしまった。

 杏も散々可愛がってやったのに、自分を放置して帰ってしまった。


 頬は痛むし、気だるい。

 なによりも、言葉では言い表わせない喪失感があった。

 苛立ちが募り、発散しようと女子を呼ぼうとしたが、パパ活に勤しむ程度の女子大生の分際で「嫌だ」と断ってきた。腹が立ったので、普段は絶対にしないが「今まで撮り溜めていた写真をばら撒くよ?」と少し脅してやると、すぐに会う約束を取り付けた。

 いつもなら鬱陶しいほど構ってくる女のくせに、自分を軽んじていたことが許せず、泣くほど快楽を与えてやろうと考えていたのだが――勃たなかった。


 なにをどうしても反応しない下半身に焦る優斗に対し、女は失笑した。

 それだけならまだしも、暴言を吐いたのだ。


「今まではちょっと可愛い子だから相手してあげていたけど、面倒くさ。ちっちゃいくせに使えないとか、笑えるよね。言っておくけど、あんたのことなんてもうなんとも思ってないから。ていうか、なんでこんな粗末なガキを相手にしてたのかもわからないし」

「……なんだって?」

「今まであげたお金は手切金であげるから、もう連絡してこないで。あんたみたいに、金にもならない、気持ち良くもなれないガキを相手にする暇も時間もないの」

「ビッチのくせに、よくも僕にそんなことを!」

「あー、はいはい。あとさ、今回は来てあげたのは忠告するためだから。あんたはこっちの動画とか持ってるっていい気みたいだけど、こっちにもあんたの動画あるからね?」

「な」

「そりゃそうでしょう。あんたが撮らせたんだから。そっちがくだらない脅しするなら、こっちも同じことするから。私だったら、顔出しで、そんな小指みたいなモノを丸出しにした動画を晒されたら引きこもるよ? じゃ、そういうことで。ばいばい、粗ちんくん」


 あまりにも屈辱的だった。

 今まで散々自分に股を開き、愛していると馬鹿のひとつ覚えみたいに言っていた女に、ああも侮辱されるとは思いもしなかった。

 だが、他の女性たちも優斗を相手にしなかった。

 社会人は完全に無視、高校生や他大学生も馬鹿にされて終わった。中学生に声をかけてみても、反応は悪い。

 結局、誰ひとりとして優斗と会ってくれる女子はいなかった。


 優斗はまったく知らないことだが、夏樹が異世界から帰還した瞬間、優斗の取り巻きをはじめ魅了を少しでも受けたことのある人間は夏樹の力の余波でリセットされている。

 その後、触れ合っている少女たちなら、まだ魅了も残っているだろうが、優斗の魅了が完全に封印されている時点で時間の問題だ。

 所詮きっかけにしかならない魅了は効果を無くし、優斗に好意を寄せていたことを疑問に思うだろう。

 その時、それでもまだ優斗がいいという子は、本当に優斗を好きなのかもしれない。

 そればかりは、誰にもわからない。

 好意をなくしてしまえば、今まで優斗を好きなゆえに許してきたことを後悔する子もいるだろう。中には、怒りを覚える子もいるかもしれない。

 どちらにせよ、夏樹にとっては優斗も女子も自業自得だ。


「夏樹が悪いんだ。僕にこんな屈辱を味わわせるなんて……そうだ、夏樹の母親を」


 どうすれば夏樹が苦しむのか考えた結果、優斗は最悪なことを考えてしまった。

 しかし、「あれ?」と首を傾げる。


「夏樹の母親ってどんな人だっけ?」


 幼い時に会ったことがあるが、それ以来だから思い出せないのかもしれない。

 優斗の脳裏には、夏樹の傍にいた女性の顔も名前も声すら思い出せなかった。

 そもそも、夏樹を絶望させたいと思いながら、一度も母親に関して思い浮かばなかったことが不思議だ。


 そこまで考えたとき、スマホが鳴る。

 誰かが自分に会ってくれるのだと期待したのだが、メッセージを開いて絶句する。

 まるで女子たちが示し合わせたように、「もう会いたくない」「別れたい」「二度と会いたくない」「顔を合わせても他人だから」「近づいたら警察に言う」など絶縁を求めてくるものばかり。

 何度も何度もスマホが鳴り、いい加減鬱陶しくなって電源を落とした。


 そして、苛立ちをぶつけるように部屋の家具に当たり散らしたのだ。


 それだけ暴れても、リビングにいる母も、隣の部屋にいる弟も、文句を言いにくることはない。

 自分が無視されている、と気づいた瞬間、


「うぁああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 優斗は狂ったように叫んだのだった。





 優斗くん不能。ついでに、好意がなくなった方々から縁切り。

 家族にさえ見放されていることに気づきました。

 まだまだ序盤です。今後の彼はどうなるのでしょうか?

 とりあえず、今はここまでです。


 次回は夏樹くんサイドです。

 そして2章に続きます。

 引き続き、何卒よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 優斗と関わった女子はだいたいおかしくなった件、優斗の溜め込んだヘイトを被害者が優斗で晴らそうとしたらうるさい女子達が居るので夏樹に八つ当たりが向いた件。 是正されたら、夏樹の生活圏であ…
[一言] やっぱ主人公の母親もなんかあるのね… 普通に考えてこいつが主人公を絶望させようと考えたら母親とか家族狙うだろうに全く描写なかったから気になってた
[一言] まさに「自分を知れ…そんなオイシイ話が……あると思うのか?お前の様な人間に…!」って感じになったな三原w 今まで散々やって来たツケが回って来たんだよ。 因果応報だな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ