60「それって俺得じゃね?」
まさか自分が完全なる血統だと思いもしなかったので、驚くが、特に問題はない。
気にすることではないし、何かしようものなら全力で争うだけだ。
「と、とりあえず、夏樹くんが完全なる血統であることは忘れましょう。よからぬことを考える者が現れても、どうせ返り討ちっすから。あ、お父さんには伝えさせてもらうっすね」
「俺も、もう知らんぞ。夏樹は属性多くて困――」
疲れた顔をした銀子が嘆息すると、同じく面倒臭そうな顔をしていた小梅が表情をそのままに固まった。
「どったの?」
夏樹が尋ねてみると、小梅はくわっ、と目を見開いて叫んだ。
「責任を取ってもらうんじゃ!」
「なになになんなの?」
「どうしたんすか?」
「どうしたもこうしたも、夏樹の雷でローストされた翼が全然治らんのじゃ! 血を寄越して回復に貢献するか、責任とって結婚するか、血を寄越した上で結婚して俺を養うかどれか選べ!」
ありえねーっす、と唖然とする銀子。
しかし、夏樹は今までにない真面目な顔をした。
「つまり、私が小梅さんと結婚してもいいということでしょうか?」
「お、おう?」
「こんなに美人で素敵なお姉さまとご結婚できるということでよろしいでしょうか!?」
「お、おうぅ?」
夏樹は床に三つ指を突き、深く深く頭を下げた。
「ぜひ、結婚でお願いします。不束者ですが、よろしくお願いします!」
「ほえぇええええええええええええええええええええええ!?」
「ちょ、小梅さん抜け駆けっす! 夏樹くんも美脚に誘われたからって早まっちゃダメっすよ!」
突然の申し出に、小梅がびっくりして叫ぶ。納得できないと続いて銀子も叫んだ。
小梅は真っ赤な頬に手を当てて、くねくね身悶えている。
「あ、あの、自分から言っておいてなんですけど、突然すぎますわ。わたくし、その、殿方とお付き合いしたことがありませんし、パパとママ、あとおじいさまにご挨拶していただかないと……まずは、あの交換日記から」
「小梅さん、キャラ! キャラがバグってますよ! なんすか、急に名家のご令嬢みたいな口調やめてくださいよ!」
一人称が「俺」だった小梅が「わたくし」と言い出したので、銀子はもちろん、夏樹も驚きを禁じ得ない。
銀子の突っ込みに、小梅がハッとする。
「お、俺はルシファーじゃぞ! 神族では超絶名家ちゅーか貴族様じゃ!」
「無理して口調直さなくても。素の小梅ちゃんも可愛いよ?」
「ばっか、可愛いとか言うな! 個性のために作り上げた、最強キャラなんじゃぞ! 五百年も俺様キャラやってたんじゃから、今さら戻れんのじゃ!」
「無駄な努力っすねー。もっと他に生産的なことしたらどうっすか?」
「無駄とか言うなぁ!」
頑張って作り上げた個性を無駄と言われて涙目になってしまう小梅はかなり可愛かった。
「ええい! この話はおしまいっす! 閉廷! つーか、こんなノリで結婚しちゃダメっすよ! 夏樹くんも若いんすから、こんな個性も定まってない女と人生共にしたら破滅っす。ところで、お給料の安定した公務員のお姉さんとかどうっすか?」
「汚い! さすが公務員じゃ、やることが汚い!」
「全国の公務員に謝罪しやがれっす! なんかある度に、税金で給料もらっているのに、とか言われる公務員になってみやがれっす!」
「俺は天使じゃから、公務員なぞにはならん! 自由に生きるんじゃ!」
「はーっははははは! そんなことではお嫁さんなんて夢のまた夢っすね!」
「なんじゃと!」
「なんですか!?」
取っ組み合いを始める小梅と銀子。
女性同士の喧嘩と思いきや、半分くらいじゃれあいに見えたので放っておいた。
(ちょっと本気だっただけに残念だ)
出会ったばかりだが、小梅のことは異性としてちゃんと意識している。
明け透けな性格もなんだかんだいって好きだ。
もちろん銀子も異性として魅力的すぎる。
どこぞの自称幼馴染みみたいに、手当たり次第に手を出すつもりはないし、手の出し方もわからない夏樹ではあるが、できることならふたりと今後も仲良くしたいなぁ、と素直に思うのだった。
まだ中学生(異世界では戦いしかなかった)の夏樹くんには、これが精一杯。
彼の恋愛事情も見守っていただけたら幸いです。
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