7「魔王さんって魔王っぽくなくね?」①
「っしゃっ! よくわからないおっさんを真っ二つにして、祐介くんの前で踊ってた変な女の腕を斬り落としてやったぜ!」
夏樹はガッツポーズをした。
強化された瞳には相当の負荷がかかっており、血が流れて痛みが襲っているが、そんなことは些細なことだった。
強化された目には、祐介が褐色メイドにお姫様抱っこされて国から脱出したのが見える。
しかし、追手がいる。
ならば、夏樹のすべきことは決まっていた。
「――次弾装填ってことで!」
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 勇者ぁあああああああああああああああああああああああ!」
聖剣を掲げた夏樹を背後から魔王ギーゼラが羽交い締めにしようとして、できなかったのでお腹をホールドして抱きつく形になった。
「なになに、ちょ、邪魔しないで! 祐介くん助けられない!」
「待て待て待て待て! なんだあれは!? あのような攻撃ありか!? なしであろう!?」
「いや、回数制限あるけど、アリだって」
「なーしーだー!」
「えー?」
涙目になって夏樹に抱きつくギーゼラがこのままでは聖剣さんが当たってしまうので、ちょっと力を入れて引き離そうとする。
だが、ギーゼラは意地でも離れないようだ。
「仕方ないか。魔王さんごと」
「待て待て待て! なんだお前は!? 判断が早すぎるのだが!? もっと考えるべきではないか!?」
「めんど」
「めんどって……この勇者こわぁ、もとから怖かったけど、もっとこわぁ!」
ギーゼラだけではなく、ラーラと獣人も夏樹を見て震えている。
正直、ここまで恐れられるのは不満だった。
「じゃあいいよ。話し合おっか。なんで邪魔するの?」
「勇者……お前の一撃は確かにそなたの仲間を救ったのだろう。しかし、その間に何人の命を奪ったと思っている!?」
「え? 有象無象の命なんてどうでもよくね?」
「――――――」
夏樹にとって、人間が死のうと魔族が死のうと祐介の命の方が大事だ。
比較対象ですらない。
彼を救うためならば、この世界の生命がどれだけ犠牲になっても痛くも痒くもない。
「あ、あ……あ」
魔王は何か言葉を言おうとしたが、言えず、夏樹を抱きしめたまま小梅を見た。
「――いや、俺様に縋るような視線を向けられても困るんじゃが」
「仲間ではないのか!?」
「俺様は由良夏樹の愉快な仲間であるのは間違いないんじゃが」
「ならば! 勇者が過ちを諌めるのが仲間ではないのか!?」
「……うーん、おどれの言いたいことはわかるんじゃが、所詮、この世界の住人は俺様たちには関係ないというか、なんというか」
「ゆ、勇者が勇者ならば、仲間も仲間だ!」
「待て待て、待つんじゃ。夏樹が斬り殺したんは、犯罪者か奴隷商人、敵対国の人間じゃろう? なんでおどれがそんな怒るんじゃ?」
「う、ぐ」
「魔王なら魔王らしく、ふはははははははっ、と笑いながら世界征服をたくらんでいるくらいでええんじゃないかのう」
「そんな魔王に誰がついてくる!」
「ちなみに、俺様のクソ親父も現役の魔王じゃが、恋する相手の家に居座って専業主夫しとるんじゃが?」
「その魔王なんか嫌だ! 我はそんな魔王ではないぞ!」
「あー、なんじゃ、俺様からのアドバイスをするとすれば――」
小梅は魔王ギーゼラに親指を立てた。
「その内慣れるんじゃ」
「慣れるかぁあああああああああああああああああああああ!」
魔王の叫びが城中に響いた。
小梅ちゃん「甘いのう。――知らぬ間に慣れてしまうもんじゃよ」
ギーゼラさん「えぇ、なにそれこわい」




