2「祐介くん超ピンチなんじゃね?」②
祐介が処刑されそうになっていることを知った夏樹だが、魔王城から彼の元まで全力で飛んでも時間が足りない。
「……勇者よ。サワターリィ・ユースケィはそなたの友か?」
「佐渡祐介くんね! 友達かって? マブよ、マブ! まーぶーだーちー!」
「ならば、力を貸そう。王女ベアトリス付きのメイドソーニャに指示を出し、そなたの友を助けるよう使い魔を送ろう。使い魔ならば、そなたが動くよりも早い」
「ま、魔王様」
「なんだ?」
魔王が提案する。
だが、獣人は言い辛そうに言葉も告げた。
「処刑執行まであとわずかです。使い魔が届いたところで、奪還に間に合うかどうか。すでに処刑台に立っていると聞きます」
「――っ」
ギーゼラは目を瞑る。
救う手立てがないのだろう。
「祐介はええヤツじゃった。南無阿弥陀仏じゃ」
「小梅ちゃん!? 諦めるの早っ!?」
「じゃが、どうもならんじゃろう」
「いや、まだなんとかなるさ」
夏樹が聖剣さんを呼んだ。
「あら、ついたのね。相変わらず、嫌な空気ね」
聖剣さんが夏樹の背に抱きつき現れる。
「ちょっと力を貸してくださいな」
「ふん。あんたは私のもので、私はあんたのものなんだからいつでも使えば良いのよ。べ、別にあんたの力になれるとか喜んでないんだからね!」
「ツンデレごちそうさまです!」
顔を赤くしてそっぽを向く聖剣さんが、一振りの剣となる。
聖剣を握り、夏樹たちが転移の際に大穴を開けた壁を見た。
「ちょうどよく、祐介くんのいるほうに良い感じの穴が空いているじゃん!」
「待つんじゃ、夏樹。まさか」
「もちろん! ここから攻撃して、祐介くんを助けるぜ!」
聖剣を強く握り、大きく息を吸った。
――次の瞬間、夏樹の魔力が爆発的に高まる。
夏樹の魔力は炎が酸素を求めさらに燃えるように、大気中の魔力を吸収し跳ね上がっていく。
「こ、これは」
おそらく、夏樹と戦い生きている者ならば、彼の強大な魔力を間違いなく感じ取り冷や汗を流すだろう。
いなくなったはずの由良夏樹がこの世界にいるのだ、と。
「行くよ、聖剣さん」
『任せなさい!』
夏樹の瞳が青く光る。
聖剣に魔力を注ぎ込み、青と黒の魔力の本流が生まれる。
祐介の居場所はわかった。
強化された夏樹の瞳には、死刑台に上がり民から石を投げられている祐介の姿があった。
「祐介くん大ピンチじゃーん! 今、助けるから――ねっ、と」
夏樹はまっすぐ聖剣を振り下ろした。
刹那、斬撃が大地を割った。
■
「きゃぁああああああああああああああああああああ!」
「へへへっ、この村は俺らが占拠したぜ。お前らは俺の奴隷にしてや」
とある人間の村で盗賊の頭領が下品な笑いをしながら、上半身と下半身が両断され大量の血と臓物をぶちまけて絶命した。
粗末な住まいが斬り裂かれ、村人たちはまるで空から大きな刃が落ちてきたと錯覚した。
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とある街道では、奴隷商人の馬車が真っ二つにされて商人と犯罪奴隷たちがバラバラになった。
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夏樹の放った斬撃は、大地を切り裂き一瞬のうちに様々な命を斬り殺した。
最後には、祐介の処刑を煽り、石を投げる人間を斬り殺す。
そして、祐介の首を刎ねようとした男を真っ二つにし、その隣で扇子を広げて高笑いしていた女の両腕を切り落とした。
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「――ギャラクシー河童勇者トリプルアクセルブラックスワンマモンマモンソルトヤマメイワナアマゴニジマスカッパカッパ……斬り」
確実な手応えを感じた夏樹だった。
なっちゃん「技名と同時に斬るじゃなくて、斬ったあとに技名ってかっこよすぎね!?」
小梅ちゃん「技名がダサすぎてそれどころじゃないじゃが!? なーんでお魚さんの名前を連呼しとるんじゃ!? 塩焼きが食べたくなったじゃろうが!」




