1「祐介くん超ピンチなんじゃね?」①
「……おどれはなまはげか何かじゃろうか?」
「あ、小梅ちゃん。無事だったんだね」
「おのれゴッドめ、壁にめり込む羽目になるとは思わんかったんじゃが。ああいうのは、漫画だけかと思っとったんじゃがのう」
小梅・ルシファーが瓦礫を払いながら夏樹の隣に並んだ。
彼女の目は、呆れた様子で夏樹に向いている。
「なまはげさんに失礼だよ!」
「……おどれはそれでええんか!?」
魔王ギーゼラは、小梅を見て、おそらく力を感じ取ったのだろう。絶句している。
「他のみんなは?」
「転移酔いじゃ。ぐったりしとるんで、しばらく大人しくしたほうがええじゃろう」
「あ、本当だ」
それぞれ無事であるが、転移による独特の感覚に酔ってしまったようだ。
夏樹はあまり気にしない。
車の方がよほど酔ってしまう。
「あ、あの、勇者なっちゃん」
「どうしたの、ラーラさん」
「ラーラでいいよ。じゃなくて、ママも尋ねたけど、どうしてこっちの世界に戻ってきたの?」
「ああ、それはね。この世界を滅――むぐぅっ!?」
「なーんでおどれはそう余計なことを言おうとするんじゃろうなぁ! 魔族側について人間どもをぶっ殺しにきたんじゃろう!」
「そうでした。はい、つまりそういうことです。俺をかつて召喚した……えっとあの国の名前なんて言ったっけ? えーっと、日本から善良な市民を攫ったクソみたいなクソのようなクソッタレな国が、まーた性懲りもなくこっちの人間を勇者として攫ったんだよ。しかも、俺の大事な友達をさ! さらに、なんか俺たちの世界の神とか魔族がよくわかんない新たな神とかについてこっちの世界を支配しようとしているのでぶっ転がしにきました!」
夏樹が説明を終えると、魔王ギーゼラと娘ラーラの瞳に期待が灯った。
「……もしや、魔族についてくれると言うことか?」
ギーゼラの期待する声に、夏樹は「はぁ?」と首を傾げた。
「魔王さんは俺に負けたんだから、協力じゃなくて、俺の配下になるんだよ」
「――っ」
「なんだったら、もう一回戦うか?」
「そ、それは」
魔力と威圧を込めた夏樹に、ギーゼラが一歩引いてしまう。
彼女の顔には、怯えが浮かんでいた。
「なーんちって! ギャラクシー河童勇者ジョーク! 嘘、嘘! いやー、俺たちはできることなら魔王さんたちと友好関係を築いて人間どもを鏖殺したいと思っていまして」
「……この子、情緒がおかしくないか!?」
「河童勇者さんじゃからしゃーないんじゃ」
ギーゼラは小梅に助けを求めるように問うが、彼女の回答は意味のわからないものだったようで、絶望した顔をしている。
「くくくくくく、魔族さんたちをうまーいこと利用して人間どもを駆逐し、河童大神様の教えをこの世界に広めてやる!」
「このギャラクシー河童勇者……くっだらねえ野望を抱いとるぞ!」
「くだらなくないよ!」
夏樹と小梅のやりとりにどう言葉を挟んでいいのかわからない魔王親娘が困惑していると、新たな魔族が部屋の中に走ってくる。
狼の耳を生やした、体格の良い女性の獣人だった。
「魔王様! 緊急のお話です! ――って、うわぁ! 勇者由良夏樹だぁああああああああああああああああああああ!」
「ええいっ、静かにしろ! 緊急の話があるのだろう!」
「そ、そうです! ブレイバーズ王国に動きがありました!」
「なに?」
「密偵を王女ベアトリス・ブレスコット付きのメイドとして忍び込ませていましたが、急ぎのことと使い魔が飛んできました!」
「内容は?」
「異世界から召喚された勇者サワターリィ・ユースケィが処刑されるとのことです!」
「意味がわからん!」
「密偵、ダークエルフのソーニャから、仲間に引き込める人材である可能性があるので助けて欲しいとのことです。しかし、処刑時間はもうわずかに……」
獣人の報告を聞いた夏樹と小梅は顔を見合わせ、叫んだ。
「なんか祐介くんが超ピンチなんじゃね!?」
「なーんであやつは処刑されそうになっとるんじゃ!?」
なっちゃん「あと地味に、サワターリィ・ユースケィってなんで巻き舌になってるのかも気になる!」




