7「塩対応だけど普通じゃね?」
鼻を押さえた指の間から鼻血を流し、青年が涙目で睨んだ。
「なにするんだ!」
「いーやー、あーのーさー! なにするんだはこっちの台詞なんだよねぇ。ジャックたちの新婚旅行に水を差しておいて、よくも俺の前にツラ出せたね。その勇気に免じて、一撃で消し飛ばしてやるよ」
「待て待て待て、落ち着け落ち着け落ち着け! わかる! お前の気持ちもわかる! 俺も反省しているんだ! 宇宙人たちにも謝りたいし、土下座するつもりだ! だが、当の本人たちが探したっていないんだから、謝りようがない!」
「って、言ってまた拉致って解剖しようとするんだよね。そういうの見飽きてるから、じゃあ、さよーならー」
「本当だって! 今の俺は、魔眼を封じられて、ただの霊能力者でしかない。今回だって、お前たちに償うため、使いっ走りとして来たんだ」
「……それで俺が納得すると思う?」
「しねえだろうな! 俺だってしないだろうと思うけどさ、マジなんだって! お前と天使のガチバトルを見たら、神が宇宙人とかそういうのどうでもよくなっちゃったんだって!」
「いや、ガチバトルじゃないです。俺たち手加減してたから」
「なにこの子、こわい」
どうやら青年は、夏樹と小梅のバトルを見たせいで価値観が変わったようだが、ふたりが本気の戦いではなかったと知り、戦慄していた。
「……はぁ。でも、とりあえずチェンジできないんなら、死ぬ前にちゃんと役目を果たしてください」
「あれ? 死ぬの確定?」
「むしろ、なんで死なないと思ってるの?」
「最近の子って怖っ」
「そういうのいいから。早く、そのなんとかさんのところに連れて行ってよ、おじさん」
「……待て。俺は二十五歳だ。おじさんじゃない! まだお兄さんだ!」
「それ大事?」
「ああ、命よりも大事だ!」
「あ、はい」
十五歳の夏樹は、おじさんとかお兄さんと呼ばれるのに必死になっている青年を見ながら、自分がこんなふうになったら嫌だなぁ、と思った。
「お前さんがどれだけ強くても、いずれくるであろう抜け毛をはじめとした老化には勝てねえ」
「……はぁ。なんか疲れるから、早く行こう」
「わーったよ。一応、名乗っておくぜ。俺の名前は七森千手だ。水無月家には敵わないが、七森家といえば知っている人は知っているような知らないような微妙な立ち位置の家だ!」
「本当に微妙!」
「ま、よろしくな。夏樹」
七森千手と名乗った青年が夏樹の肩に手を置くが、ぺしっと叩き落とされた。
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでほしいな。由良さんと呼んでください」
「塩対応がツレぇ」
自業自得だけどさ、と肩を落とした千手の車に乗り込み、夏樹は同じ異世界召喚の被害者の家に向かうのだった。
七森千手さんでしたー。
お察しの方はいるかもしれませんが、彼はちょこちょこ出てくる……かもしれません。
また、ゴッドの存在は知らず、なーんか捕まっていたら上から釈放の代わりに由良夏樹をとある家に連れて行けとだけ命令されています。
事情は知りません。
またちゃんと反省をしていて、ジャックたちに謝罪したいと思っています。無論、謝罪しても許されることではないとも。しかし、ゴッドよりのゴッドみたいな存在であるジャックとナンシーなら、きっと……彼の出番を増やすような優しさを見せてくれるかもしれません。
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