37「置いてかれた側にイベントじゃね?」②
気軽な挨拶をした少女はひらひらと手を振って近づいていくる。
「えっと、警戒する必要はないかな。僕は炎の神。由良夏樹から話を聞いている、かな?」
「……なんだ、夏樹の関係者ね。馬鹿みたいなプレッシャー向けてきて、ガチの殺し合いを始めるのかと思ったじゃない!」
「ごめんごめん。君たちに会えたことが嬉しくて、少し力が漏れちゃった」
「で? 何をしにきたのかしら?」
夏樹の名前が出てきたので花子が話かけるが、警戒は解いていない。
一登も確かに夏樹が、夢の中で「海の神」「炎の神」「大地の神」がいて、たぶん「風の神」もいると聞いていたが、そのひとりが目の前に現れるとは予想していなかった。
「由良夏樹が三原一登がいい子だから一度会ってやってって、言ったんだ」
「夏樹くん案件だった! そういえばそんなこと言っていた気がする!」
「あの子は! 本当にあの子はぁあああああああああああああ!」
急な「炎の神」の接近は夏樹のせいだったとわかり、「またか!」という感情が二人の中に渦巻いた。
「簡単に説明するけど、三原一登が契約している火輪の剣は私の一部。私はかつて、身体を分割して私と相性のいい人間を探していたんだけど、見つからなかった。どうしてか異世界に移動していた火輪の剣が最後の一部。そして、三原一登が契約をした……よね?」
「えっと、うん。火輪さんと契約はしたよ」
「……一応は勇者になっているみたいだけど、中途半端だね」
「――っ」
中途半端、という言葉に一登は動揺してしまう。
同じ勇者なのに、夏樹にも祐介にも力が及ばないことを気にしていたからだ。
「火輪の剣は僕の中でも一番弱かった。しかも、力がなくなりつつある。そうなると、君は勇者どころか、戦う力を失うよ」
「そんな」
動揺し、後退する一登を花子が支えた。
「――お母様!」
一登の背後から、金髪縦ロールの美少女にして火輪の剣が現れ、炎の神を母と呼ぶ。
すると、炎の神は不機嫌な顔になった。
「お姉様と呼んで」
「いえ、わたくしはお母様から生まれたのでお母様ですわ!」
「……火輪の剣だけ頑なだね」
「お母様のお名前をいただきましたので、気高く、誇り高く有りますわ!」
「僕の一部とは思えない性格だよね。まあいいや」
火輪が炎の神を「母」として認識しているのなら、炎の神の言葉は嘘ではないのだろう。
それでもやはり、何が目的かはっきりしないので警戒は解けない。
「それであんたは何をしにきたの?」
「あ、そうだった。あのね、僕は三原一登を僕の勇者にしてもいいと考えているんだけど、人となりをまったく知らないから不安もあってね」
「それで?」
「――だから同棲することにした」
「なんでよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」




