34「つくつくとすさすさの一休みじゃね?」②
グラスに麦茶のおかわりを注いでくれながら、素盞嗚尊が少し渋い顔をして話を続けた。
「門の神はなっちゃんがぶっ殺して、死の神も捕縛した。諸手を挙げて喜びたいところだが、あの「帝国」とかいうかっこいい組織はなんなんだ? 人間のくせに、えらい力を持っていたんだが?」
「かっこ、いい? ……まあいいでしょう」
月読のセンスでは「帝国」はあまりかっこいいとは思わないのだが、あえてそれを言う必要はない。
「柏原保と名乗った彼は、人間とは思えない力でしたね。千手くんたちから聞いていましたが、相対して話以上であったと感じました」
「ったく、どいつもこいつも安易に異世界に来やがって。俺も行きてえ! 異世界召喚に巻き込まれた神様ですがあえて魔王側について勇者と戦ってみた、とか」
「普通に異世界召喚されればいいのに、タイトルからあなたの性格が悪いとわかりますね」
「ひどいっ!」
実際問題として、地球とは違う異世界に召喚されている者は一定数いることは知っている。
日本だけではなく、海外でも、異世界に召喚されて帰還した者は確認されているのだ。
しかし、転生になると把握ができない。
もっと言えば、異世界に召喚されて戻ってこなかった、もしくは、戻ってこられなかった者もいるだろう。
一体どれだけの人間が異世界に移動しているのかわからない。
願わくは、異世界での生活を選んだ者たちが幸せであるようにと思う
夏樹や祐介のように、異世界を嫌悪してしまうほど酷い目に遭った人間もいるのだ。
「帝国」の人間と直接喋ったのは柏原保だけであり、他の面々がなにをどう考えているのかわからない。
千手の報告から、地球での環境が悪かったことや、異世界での環境がよかったことから、異世界に残りたかった者もいるようだ。
「すべての「帝国」の人間が本当に人類の頂点に立とうだなんて考えていないのはわかっているのですが、それでもトップが愚かなことを考え、従わせる力があることが事実であることは……面倒ではありますね」
「だよなぁ。柏原保が、それなりにできる奴だったが、あれでトップじゃないっていうんだから厄介すぎるだろう」
「柏原保の力は夏樹くんほどではありませんでしたが……彼が勇者であることは変わりません。まだ出していない力もあるでしょう」
「ぶっちゃけ、祐介や一登、千手じゃいい勝負はできると思うんだけど、負けると思うんだよなぁ」
「素盞嗚尊はそう考えますか?」
「考えるっていうか、直感?」
素盞嗚尊がそう言うのであれば、そうなのだろう。
月読的には祐介ならば勝てると思っているが、一登や千手ではまだ勇者としての経験が浅いので力に振り回れてしまうだろう。
夏樹のように力を振り回されながらも、基本的な力が神々や魔族に届くからこそ、問題なく戦えている。
無理をして力を制御下にした夏樹の力は、正直ゾッとするほどだ。
「さて、少し休憩をしたところで、そろそろ私は死の神に話を聞いてきます。私の神域に携帯を持っていくことはできないので、素盞嗚尊、あなたがここで電話番をしていてください」
「あいよ! あ、冷凍餃子食べていい?」
「好きにしてください」
「やったー! お兄ちゃんだいしゅき!」
「……呪うをやめてくれますか?」
「俺の純粋な好意なのに、ひどい!」
そんなやりとりをした後、月読は素盞嗚尊を残して自らの神域に足を踏み入れた。
「――お待たせしました。それでは、お話を聞かせてください」
星空が輝く草原の中で椅子に座っていた死の神に、月読命は柔らかく微笑んだ。




