20「邪悪とか言われたの初めてじゃね!?」
夏樹は草の濃い匂いがする草原にいた。
「あーらら」
やってしまった、と言わんばかりに天を仰ぐ。
「まさか、つい先日いつるさんにこてんくしゃんにされて泣いて逃げた癖に、こんな短期間で襲撃決めてくるとは思わないでしょう!」
「……あたしまで巻き込まれているんですけど」
夏樹の隣には不機嫌な顔をした「蒼穹の星槍」こと星子が頬を膨らませて立っている。
「そりゃ相棒じゃないですかー」
「バトルは一日に一回にしてほしいわ」
「それは俺のセリフですからぁ! こんなにバトルイベントばかりの一ヶ月を過ごす中学生他にいないからね!?」
「自慢にならないのが悲しいわねぇ」
「本当よね!」
夏樹は膝と手を地面に着きしくしくと泣き始める。
せっかくの休日が立て続けのイベントで悲しい。
「それにしても、門の中っていうけどちょっとした異世界よね」
「じゃあ破壊するしかないよね!」
「そうね。それしかないわね」
異世界は破壊する。
夏樹と星子の意見は一致した。
というか、それ以外選択肢がないのだ。
どうせ本当の意味での世界ではなく、擬似空間だろう。
「じゃあ敵が来るまで少し休憩を」
「もうきているんですけど」
「サイテー、ちょっと空気読んでくれますぅ?」
草原の向こうから、十人の人影が近づいてくる。
誰もそれなりに魔力を持っているようだ。
「やれやれ、殺気立っちゃって。ふたりに対して十人とかどんだけビビってんだよ、俺たちのことを」
「ざーこ、ざーこ!」
「ちょっと、星子さん! なんで急にご褒美をあげてるの!? そういうのよくないから!」
「……ときどき夏樹がちょっときもい」
「ひどい!」
夏樹が星子と朗らかなやりとりをしていると、十人はお互いに視認できる距離まで近づくと足を止めた。
「――由良夏樹か?」
「ギャラクシー河童勇者由良夏樹様だ!」
「……意味がわからないな。まあいいや。僕たちは、門の神に君を殺すようにお願いされたんだ」
「あっそー」
代表者なのか、金髪の優男が前に出てきた。
白銀の鎧を身につけ、装飾の施されたロングソードを手に持っている。
足運びのそれは、一流の剣士だ。
「門の神が君を邪悪な存在であり、僕たちの世界をいずれ破壊すると言った。正直、いきなり現れた自称神の言うことを素直に聞くほど僕たちは間抜けじゃない。しかし、巻き込まれてしまった以上、どうやら君を倒さないと元の世界に帰られないようだ」
「そりゃ残念。もう一生帰れないっすね」
「個人的に、無意味な戦いをするためにこの力を得たわけではないのだが――正直、僕の目から見ても君は邪悪だ」
「ちょ、おま、向島市の紳士代表のなっちゃんを捕まえて、邪悪だと! さすがにそんな酷いこと今まで言われたことないんですけど!?」
「ぶはっ、邪悪って、さすが夏樹、ぶはは」
ショックを受けた夏樹に対し、星子は大笑いしている。
「邪悪ねぇ、じゃあ邪悪らしく宣言してやるよ。そっちが喧嘩売ってきたんだから、俺がお前たちを殺した暁には、お前たちの世界をすべて蹂躙してやる!」
「あたしたちに喧嘩売ったことを後悔しなさい!」
夏樹と星子は「にちゃぁ」と邪悪に笑った。
せめて、サミュエル・シャイト、レダ・ディクソン、ジャレット・マーフィー、叶海麻人、ノア・アレン、ニック・リュカオン・スタンレイが揃っていれば勝ち目はあったかもしれません。
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※ここ二週間ほど睡眠障害になってしまい、短時間しか眠れず1日フラフラしております。そのため、パソコンに向かう時間が短く最低限のことしかできずにおります。
コメントへのお返事もしばしお休みさせていただきます。
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