19「門の神が仕掛けてきたんじゃね?」①
「彼」はずっと見ていた。
死の神が単独で動いていることは知っていた。
由良夏樹の命を狙っていることも知っている。
死の神が由良夏樹を殺すように、仕向けたのは「彼」なのだから。
間接的に、人を動かしてさも偶然のように死の神と加座間吉座を引き合わせることに成功した。あとは、ふたりが勝手にやってくれる。
「彼」は由良夏樹を殺すために、様々な手を打ってきた。
――しかし、どれも通用しなかった。
由良夏樹にはさらに規格外の師匠までいる。
ふたり同時に相手をできる生き物など存在しない。
ならば、確固撃破するしかない。
小さな仕掛けなど施さず、大きな仕掛けで殺すのだ。
そのための準備をした。
あとはどのタイミングで仕掛けるか、だ。
死の神との戦いで夏樹は消耗している。
底が見えないのは相変わらずだが、消耗したことには変わりないので「今」こそ好機だ。
「彼」――「門の神」は確信する。
――今こそ、由良夏樹を殺す時だ、と。
■
夏樹は瓦礫の上で寝転がったまま、身体から力を抜く。
「力使ったからお腹減っちゃった。ねえねえ、何か食べに――」
がこん、と夏樹の真下に大きな扉が現れた。
「夏樹ぃ!」
すぐに異変に気づいた小梅が翼を広げ飛び手を伸ばす。
夏樹も自身の身に起きたことを理解した。
「――小梅ちゃ」
しかし、遅かった。
夏樹は扉の中に吸い込まれ、消えた。
門が閉じられた。
「門の神か!」
死の神が同じく、新たな神々の名を叫ぶと、瓦礫の上に幼い少年の姿をした神――門の神が現れた。
「やあ、死の神。君のおかげで忌々しい由良夏樹を僕の世界に閉じ込めることに成功したよ。先日、彼の師匠だかに一瞬で門を破壊されたから強化に強化を重ねたんだ。門の中には、さまざまな世界の傑物たちを集めてあるから、中ではすごいことが起きると思うよ?」
「貴様ぁ! ようも夏樹に好き勝手してくれたのぉ! 手足をへし折って、夏樹を解放させてくださいと言わせてやるじゃ!」
「ルシファー・小梅。混ざり物の分際で偉そうなことを言うじゃないか。君のための門も作ったんだ。君も入れてあげよう」
小梅に門の神がいやらしく笑う。
が、その笑みが張り付いた顔に、花子の拳が叩き込まれる。
鼻が陥没し、血が流れるが、門の神は気にした様子がない。
「はははははは! 由良夏樹さえ封じればお前らなど怖くないんだよ! 出よ、異世界の傑物たちよ! この世界を好きにすればいい! 蹂躙でも、支配でも、自由にしろ!」
人ひとりが収まるサイズの門が現れる。
門の神の合図とともに、門が開くと、そこには鎧を身につけた人間、異形の戦士などが収められていた。
彼らが目を開ける。
ゆっくり足を伸ばし、こちらの世界への一歩を踏み出したのだった。




