17「死の神の事情じゃね?」②
「というか、死の神さ。その子の病気を殺すことってできないの?」
「……私も考えた。私に殺せないものはない――だが、できなかった。私には、人間の病も、身体もなにもわからない。万が一、あの子ごと殺してしまったらと考えるだけで、私は何もできなくなる」
夏樹の質問に対し、死の神は悔しそうに答えた。
彼も考えていないわけではないようだ。
考えた上で、無理だったのだ。
「俺のヒールも病気に効くんだかどうだか。物理的な怪我なら余裕で治せるんだろうけど、うーん」
夏樹も死の神と同じだ。
詳細はわからないが、大金がかかる海外での手術であるのなら移植などが思い浮かぶ。
移植が必要なものをヒールで無理やり回復することはできるかもしれないが、その後どうなるのかわからない。
完璧に回復するのか、それともまた悪くなってしまうのか。
生まれつきの場合は、回復魔法がどう認識するのかも不明だ。
「お金、お金かぁ。月読先生とすさすさなら一億円なんて大したことないよね?」
「夏樹くん、教師の私に何を期待しているんですか!?」
「俺だってお小遣い制だからね! ほら、三千円しかお財布に入っていないの!」
「またまたー」
「真面目に一億円なんて無理ですから。神だからってそんなお金持っていませんからね」
「悪いな、なっちゃん」
「そっか。ごめんなさい。てっきり月読先生もすさすさも外車のって札束で札束のうちわじゃないと涼しくないとか言っているんだとばかり」
月読と素盞嗚尊が顔を引き攣らせた。
あまりにも偏見するぎる。
「じゃあ、仕方がないな。あるところから持ってきますか!」
夏樹はそう言ってアイテムボックスから取り出した目出し帽を被った。
「なーに、ギャラクシー河童勇者様にかかれば銀行のひとつやふたつちょちょいと襲撃してみせるってもんよ!」
「由良ぁ、その一線を超えたらなんでもありになっちまうだろう! どうせ襲撃するなら加座間吉座を襲撃しやがれ!」
さすがに千手が止めた。
花子と小梅が「その手があったか!」と顔をしているが、論外だ。
「えー、あのおっさん金持ってなさそう」
「さすがにないだろう。死の神を相手に、金がありませんでした、なんて冗談はやべえって」
「あのおっさん、あんまり考えてなさそうだし」
「それはわかるけどさ」
一億円というのは大金すぎる。
水無月家や七森家だって簡単に用意できないだろう。
しかし、死の神に簡単に与えていいものかも悩ましい。
彼が二度と敵対しない、と誓うくらいしてもらわなければ割に合わないだろう。
「――あの」
百合園ありすが小さく手をあげた。
「お金を用意することはできませんが、病にかかっている方をわたくしの家の力で手術を受けられるよう手配をすることならば、できると思います」
ありすの言葉に、この場にいる全員が驚いた顔をして彼女を見た。




