80「結局、力を持ったら自由に使いたいんじゃね?」①
荷物が積まれた倉庫の一角の空いているスペースに、ありすたちを見つけた小梅が声をかけた。
花子は万が一に備えて、屋根の上にいる。
当初は、小梅が警戒をして、花子が突入しようと考えていたのだが、聞こえてくる言葉に「説教しそう」と頭痛を覚えた花子は小梅に任せたのだ。
「――誰だっ!」
「美少女天使様じゃ!」
ありすと向かい合うように、ふたりの少女と、ふたりの少年が睨み合っている。
五人は、まさに小梅たちが危惧していた、ありすに何もかも丸投げしていながら責任追及しようとする耳障りの悪い会話の真っ最中だった。
「何が天使よ! ――え? 人じゃない、の?」
「ほう、一丁前に文句ばかり垂れていた小娘の割に俺様が人と違うことに気づけるようじゃな」
少女たちが身構えた。
ありすに食ってかかっていた少女が、ありすに次ぐリーダー格なのかもしれない。
「……まったく聞こえてくる会話に呆れてしまったんじゃが」
「申し訳ございません、小梅様」
「謝罪いたしまたもんたもん」
「別にありすと多聞が謝る必要はないじゃろうて。――よう、聞け、小娘小僧ども」
声に圧を込めると、少女たちは無意識に後ずさった。
「ありすは俺様たちの陣営が預かる。お前たちとはもうお別れじゃ。これからは、ありすに頼ることなく、自分の力で頑張って生きていくように!」
「――はぁ!? ちょっと待ってよ、ありすさん! 私たちを見捨てるわけ!」
「わたくしは――」
「ありす、何も言わんでええ。こやつらには何も届かん。俺様も長く生きていることもあって、いろいろな人間を見てきたんじゃが、こやつらは自分たちが良ければええと思っとる人種じゃ。まあ、子供じゃから、しゃーないんじゃろうがのう」
「ふざけんな! 勝手に話を進めて、子供扱いしやがって! 私は、勇者よ!」
少女が剣を抜こうとしたが、それよりも早く小梅が動き剣の柄ごと少女の手を強く握りしめた。
「痛いっ、ちょっと、やめっ」
「ええんか? これを抜いたら、俺様はおどれを本気で敵と認識するんじゃが?」
「――――っ」
吐息がかかるほど顔を近づけ睨みつける小梅に、少女は悔しげに顔を歪めた。
小梅が手を離すと、よほど痛かったのだろう、剣から離した手をもう片方の手でさすっていたが、すぐに嫌な笑みを浮かべた。
「……ねえ、ありすさん。この人が天使で、あなたが庇護下に入るのなら私たちも一緒に」
「ふざけとるのう。誰がおどれなど庇護するか! 名も知らんし知りたくもない小娘よ、おどれは特に勇者としての力を使うことに躊躇いはないじゃろう?」
「はぁ?」
「別に、新たな神々であっても、ありすと違う「帝国」であったとしても、自分の力を誇示できればええんじゃろう? あー、少し違うんか。自分が特別だと思いたいだけじゃろう?」
「――好き勝手言いやがって、てめえに何がわかるんだよっ!」
小梅の言葉に、少女は顔を歪めて叫んだ。




