間話「まもんまもんなSNSじゃね?」①
――青森、某所。
「マモンの野郎、帰ってこねえぇええええええええええええ!」
さまたんは荒ぶっていた。
その証拠にいつもよりも畑を耕すクワの威力が違う。
七つの大罪の魔族にしてさまたんの幼馴染みであり部下でもあるマモンが、ひとり抜け駆けをして青森から向島市に向かって時間が少し経った。
青森から出ることを禁止されている身であるマモンだが、よりによってその刑罰を決めた魔王サタンのいる地に行くのは正直理解に苦しむ。
「もしかして脱走しちゃったんじゃないのぉ?」
そう呟くのは、スマホを触りながら休憩中の愛の女神こと愛ちゃんだ。
「――すでに脱走済みなんだがな!」
「そうじゃなくって。シャバの空気を吸って戻ってくる気がなくなっちゃったってこと」
「……シャバの空気も何も、あいつやりたい放題だったじゃねえか!」
「それは、そうなんだけどね」
「何よりも、婚約者の亜子ちゃんがいるんだから戻ってこないことなんてないだろう」
「それもそうか。あ、でも」
「なんだよ?」
「亜子ちゃんも数日前からご実家の方に戻っているのよね。なんでも本格的にこっちにくる手続きがあるとかなんとか」
「あー、そういえばそんなこと言っていたかな」
強面のマモンだが、恋愛面では初心だ。
人間の女子高生真門亜子と純愛を送っており、先日ご両親に挨拶をして婚約となった。
亜子は、学校での人間関係で嫌なことがあり、祖父母がいる青森で心の療養をしていたのだが、本格的にこの地に引っ越してくることになった。
そのため、現在、転校手続きなどあるようで、忙しいと聞いている。
(ぶっちゃけ、青森に越してこなくても、亜子ちゃんに害を与えることのできるやつなんてもういないんだけどなぁ)
亜子の傷つけた人間たちは、不思議なことにそれぞれ「不幸」なことになっている。
死んではいないが、それなりに苦しんでいることをさまたんは知っている。
「さまたんさ、マジで気づいていないみたいだから一応言うけど」
「なんだよ?」
「亜子ちゃんってSNSやってるでしょう?」
「なんだよ、急に。ちゃんとフォローしているし、昨日も投稿を見たぞ?」
「マモンもSNSやっているの知ってる? あ、まもんまもん系のアカウントじゃなくて、マモン個人のアカウントなんだけど」
「どっちもマモンのじゃねえか。あ、いや、まだあいつがまもんまもんを動画に発信する前にやっていたSNSのほうか。知ってる知ってる。あまり見ていなかったな。青森に来る前は、フランスでシャンパン飲んで、ワインの試飲会に参加して他の参加者との写真をアップしている感じだったし」
「あるわねぇ、そういうSNS。じゃなくて、最近の見た? 見ていないなら、見てみなさいよ」
「なんだよ、急に」
「いいから、いいから」
愛ちゃんに言われ、渋々作業着からスマホを取り出し操作をする。
「……マモンの野郎、飲み屋でおっさんと楽しそうじゃねえか。誰だ、七森康弘と森山田善次郎って。あ、こいつらのSNSのリンクもあるのか。どれどれ。やべえな……七森っておっさんは息子の部屋で踊ってみたとかギター弾いてみたとかちょっと怖いし、森山田に至ってはなんか意識高い系のSNSだったのに急に親戚の子を預かったとかで中学生と一緒の写真がアップされているんだけど、これ、大丈夫か? 事案じゃない?」
「そっちじゃなくて! 続き! 続き! そのおっさんたちも無駄に主張強くて気になるけど、今は置いておきなさいよ!」
「続きって…………あの野郎、なーんで浅草観光してるんだよ!?」
マモンのSNSには、浅草の雷門前にいる写真がアップされていた。




