65「休みの日くらいイベントなくてもよくね?」②
朝食は、目玉焼きにウインナー、白菜の漬物、豆腐と玉ねぎの味噌汁が並んだ。
サタンはもっと用意してくれようとしたが、これから眠るつもりである夏樹にはちょうど良かった。
朝はしっかり食べたいが、ダラダラするには食べすぎてしまうため、ちょうどいい塩梅だった。
疲れていたせいで腹が減っていたのだろうか。
あっという間に食事を終えると、起きてきた母や小梅たちと挨拶を交わし、歯を磨く。
小梅たちが心配そうに声をかけてくれたが、夏樹は平気だと笑い部屋に戻った。
「なんだろう、朝なのにすごく疲れている、かも」
今は、何も心配なく眠れる。
風の神曰く、海の神は夏樹との会話に緊張し、かつてないほど誰かと喋ったことで限界のようだ。
しばらくはお互いのためにも干渉はないはずだ、と言ってくれていた。
夏樹としては海の神と会いたくないわけではない。ホラー要素がないのであれば、常夏のビーチでのんびり太陽を一緒に浴びてもいい。
いつかそんな日が来ることができればいいと思う。
「あ、駄目、もう……限界」
ベッドにうつ伏せに倒れると、夏樹はそのまま寝息を立てる。
――きっと今日はイベントなど起きずにゆっくり眠っていられるのだろう。
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「夏樹も大変じゃのう。変わってやれるもんなら変わってやりたいが、さすがに俺様のようなスーパー美少女天使小梅様でも、人様の夢の中にまでいけんのじゃ。ガープの知り合いの獏に頼めば違うんじゃろうが、毎回それじゃと本当に夏樹が休めんじゃろう」
「まあな。パパも夢に介入できる魔族を紹介することはできるんだが、そもそも問題は夢の中に入る入らないじゃねえからなぁ」
食後のお茶を飲みながら小梅とサタンの父娘が夏樹を案じていた。
春子はすでに仕事に向かった。銀子も何やら仕事があるようで、朝食を食べると外出していった。
星子と菜々子はリヴァ子にスマホからタブレット、パソコンの操作を学んでいる。
ジャックとナンシーは旅行を継続しており、まだ帰ってくる気配はない。聞けば、京都で酒呑童子と意気投合し、楽しくやっているようだ。
「なんじゃ、学校は休みな分、イベントもないじゃろうて。夏樹本人がお疲れで爆睡中なんじゃから、イベントに巻き込まれようがないんじゃ」
小梅はすでに、一登や杏をはじめ、千手、祐介、征四郎、東雲、花子たちに「夏樹がイベント過多でお疲れじゃから、よっぽどのことがない限り夏希に直接連絡したらいかん。なんかあったらこの小梅様に言うんじゃ!」とメッセージを送ってある。
夏樹以外も、何かとイベントに愛される人間ばかりなので何かが起きるかもしれないが、夏樹が出ずとも解決できることは小梅が解決しようと思っている。
小梅も、夏樹ほどではないが暴力で物事を解決するのは得意なのだ。
「小梅と花子がいれば大概はなんとかなるだろうな。だが、気をつけるんだぞ。人間っていうのは時にして、神々や魔族を上回る強さを持つことがある」
「そんなこと夏樹を見とれば嫌なほど知っとるんじゃ」
「いやぁ、夏樹は例外中の例外の強さなんだがなぁ」
ずずず、と小梅とサタンがお茶を飲み干す。
サタンはもちろん、小梅も天使の中では上位の存在であるが、新たな神々などは厄介だ。
サタンの場合は単純に手を出す気がないのだが、小梅は相手によって火力不足でもある。
実際、花粉症の神を殺しきれなかった。
だが、小梅が本当の意味で「その気」になれば、殺せていただろう。
小梅が本当の意味で本来の力を発揮する日が来ないことをサタンは父親として願うだけだ。
「さてと、昼も力がつくもんを作ってがっつり食わせてやるか!」
そろそろ商店街が開き始める時間だ。
サタンはマイエコバッグを装備した。
すると、玄関のチャイムが鳴った。
「……なんじゃ? 朝から来客か?」
「ちょっと小梅ちゃん出てくれない? パパ、身支度しているから」
「おっさんがなんで身支度に時間かかっとるんじゃ。へいへい、もしかしたらイベントが向こうからやって来たんかもしれんのう」
「ちょ、小梅ちゃん。冗談でもやめなさい! めっ!」
「おっさんの、めっ、は視覚的にも聴覚的にも心にも暴力的じゃろうて。なーんでいい年したおっさんが頬を膨らます姿を見せられんとあかんのじゃ」
ぶつくさ言いながら、玄関を開けた。
「ごきげんよう。わたくしは「帝国」の――」
小梅は反射的に玄関を閉めた。
「マジでイベントの方からきちゃったんじゃがぁあああああああああああああああ!?」




