54「ぬめりを取るには重曹とクエン酸じゃね?」①
大地の神から譲り受けた骨董品のウィジャボードは不思議なことに、半日経っても湿っていた。
夏樹もすっかり慣れてしまったもので、もう素手で持てる。
「……なんでヌメヌメしているのかはさておくとして、本格的なウィジャボードだな。見る限り、マジで降霊術を成功させている逸品だな」
「降霊術を恒例に行っていたらしいよ」
「なんでこんなもんを学校に行ったはずの夏樹が持ってるんだ? またイベントか?」
「あの、降霊術を恒例に」
「スルーされたんだから諦めろよ!」
「会心の出来だったのに」
「嘘だろ!?」
しょんぼりとしている夏樹に、頭痛を覚えたようにサタンが唸る。
小梅は「なんでそんなしっとりぬちゃぬちゃしたモンをがっつり持てるんじゃ?」と夏樹に驚愕していた。
「それで、このウィジャボードはどこで手に入れたんだ?」
「もらった」
「もらった!?」
「……随分と気前がええのう。これを好事家に売っ払えば、ちょっとした金になるんじゃが」
「そんなにお高いんですか!?」
「お高いんじゃ」
「お高いぞ」
(水無月家か加座間家が言い値で買ってくれないかな……)
夏樹は札束の浴槽に入って「うぇーい」と小梅と銀子と一緒にピースしている姿を浮かべる。
「売りたいけど、大地さんからもらったものだしなぁ」
「大地さんって誰じゃ? なんじゃろう、大地とつくだけで心がざわざわと不安になるんじゃが」
「祐介くんに酷いこと言わないで!」
「酷いのはおどれじゃ! 俺様はあえて名前を出さんかったじゃろう!」
「でも祐介くんのことでしょう!」
「そりゃそうじゃが!」
破天荒な天使である小梅でも、祐介の存在は不安要素らしい。
さすが祐介だ、と夏樹は心の中で拍手を送る。
異世界にも、ファンタジー溢れる地球でも、祐介の存在は唯一無二なのだ。
「祐介が厄介な存在であることは周知の事実だからいいとして、そのウィジャボードを誰からもらった。夏樹みたいに力がある人間ならさておき、一般人が持ったら体調を崩すぞ?」
「……大地さんめ、そんなもんを俺に渡したのか」
「その大地さんがどこのどいつかって聞いているんだよ!」
「えっとね、大地の神」
「新たな神々か!」
「なんでもうエンカウントしとるんじゃ!」
「違う、ちーがーうー! 新たな神々じゃなくて、逆! 逆に古い神! というか大地そのもの!」
「何を言うとるんじゃおどれは? 大地そのもので古い神とか、まるで原初……ちょ、ま、おどれ、会ったんか!? 神々よりも古く、神々よりもわけのわからん存在にあったんか!?」
「マジか……あいつらいるのか、向島市に」
小梅は夏樹の襟首を掴み大きな声を出し、サタンは信じられないと声を絞り出していた。
「よくわからないけど、大地さんは祐介くんに大地の勇者の力を与えた人で。海の神と炎の神と風の神と一緒に俺の夢の中を常夏のビーチにして、陽キャパーティーをしていたんだ!」
「意味がわからねえ!」
「誰か通訳を呼んでくるんじゃ! 千手じゃ、千手を呼んでくるんじゃ! 困った時はあいつに丸投げしておけばええんじゃ!」
「ひどい! 全部本当だよ!」
「それはそれでおかしいからな!」
「なーんで、原初の奴らが夏樹の夢の中で常夏ビーチ決める陽キャになっとるんじゃ!?」
「それは俺が一番聞きたいからね!?」




