53「卵かけご飯ってテンション上がらね?」②
「そういえば小梅ちゃんって今日は何かしてたの? いつもと脚の雰囲気が違うんだけど」
「足の雰囲気ってなんじゃ!? まあ、花子おねえちゃんと一緒に女子高生を狙う不届者を捕縛するために俺様が春子ママのセーラー服で、花子お姉ちゃんが雲海おばあちゃんの袴姿で囮になったんじゃが」
「大正ロマン的な感じ? いいなぁ。花子さんは、最初こそ美脚じゃなかったけど、最近は健康的な生活をしているせいもあって美脚になりつつあるからね。小梅ちゃんが選ばれし美脚の持ち主だからもしやと思ったけど、まだまだ伸び代はあるね」
「……選ばれし美脚の持ち主ってなんじゃ……たまーに、おどれはよくわからんことを言うのう」
星子が「たまにじゃないでしょう!?」とゲームしながらツッコんでくる。
「それで、コスプ……変装した甲斐はあったの?」
「――今、コスプレって言わんかったか?」
「言ってないよぉ! なっちゃん、そんな難しい言葉しらないもん!」
「まあええじゃろう。釣れるには釣れたんじゃが……よくわからん悪霊じゃったんじゃが、俺様と花子おねえちゃんに向かって暴言を吐いたんでのう。消滅させてしまったんじゃ」
ちなみに暴言というのは「ババァが無理してんじゃねえよ!」というものだった。
姉妹は何も言わずに、神力をぶっ放し、悪霊は成仏ではなく消滅してしまった。
本来は変質者を捕縛することだったのだが、悪霊ならば仕方がないということでミッションコンプリートとなった。
「なんて命知らずな」
「春子おねえちゃんはとにかく、俺様は十代で余裕じゃから。どっかの飲兵衛とは違うんじゃ!」
「その銀子さんはいずこに?」
「なんでも、帝国ちゅー組織を父親に報告したら詳細を求められて、呼び出されたんじゃ。銀子パパも夏樹みたいんが何人もおると思うと胃も痛くなるじゃろうて。んで、実際問題としてどうなんじゃろうな?」
「どうって?」
「俺様も異世界には行ったが、そうそうに何人も召喚されたり、転移したりするもんなんか?」
「うーん、俺は召喚した側じゃなくてされた側だからなんとも言えないんだけど、ゴッドやまんたさんみたいに管理している神がいるのなら、それこそ世界ってたくさんあるんじゃないかな? 星子さんと菜々子さんもたくさん破壊してきたんだし」
「そうじゃのう」
夏樹はちょっと力があるだけの一般人だ。
並行世界だか異世界だかそういうことには疎いし、別に知らなくてもいい。
「世界は星の数ほどあるぞ」
そう言ったのは台所からサタンだ。
「基本的に生きていれば他の世界なんて関わることも知ることもないんだがな。サタンさんとしては、そんなもんに関わる暇があるのなら、この世界で全力で生きろって思うね。娯楽として物語を読むならいざ知らず、実際に行ってみると本当に幸せな世界とは限らないだろ」
「……それは、おっしゃる通りですねー」
「異世界がどうこうってわけじゃないんだがな。ま、現代人がスマホのない世界に行くだけでも結構苦痛だろう。ああいうのは物語の中だけで十分なんだよ」
「クソ親父の言い方じゃと、行ったことあるような口ぶりじゃのう」
「俺も若い頃いろいろあったんだよ」
「……ほーん」
「あ、興味ない顔してる! 小梅ちゃん、もっとパパに興味持って!」
「うざっ!」
「ひどっ!」
娘にうざいと言われたサタンはしくしくと泣き始めた。
しかし、腐っても魔王だ。
泣くのを我慢して、夏樹に問いかける。
「異世界はいいとして、夏樹」
「うんにゃ?」
「お前は学校で何を拾ってきたんだ?」
「どういうこと?」
「スクールバッグから禍々しい気配がするんだが」
「なんか拾ってきたんか?」
サタンと小梅の視線が夏樹のスクールバッグに向けられた。
「あ、もしかして、これのこと?」
夏樹はスクールバッグの中から、大地の神からもらったウィジャボードを取り出した。
「なんかヌメヌメしとるんじゃが!」
「なんかヌメヌメしてるんだけど!」
さすが親子というべきか、小梅とサタンの反応は同じだった。




