51「イケメンって高級車に乗っているイメージじゃね?」②
「ガープさん、月読先生、送ってくれてどうもありがとうございました! お兄ちゃんもありがとう!」
「おう」
「いいえ、お気になさらず」
杏の住むマンションに着くと、彼女は車から降りて手を振った。
「またね、杏さん」
「――うん!」
夏樹も杏に手を振ると、嬉しそうな笑顔を浮かべてマンションの中に入っていった。
「へっ、杏も変わったな。もちろん、良い意味でだぞ。何かとアマイモン様も心配なされていたので、良い土産話になる」
「ええ、彼女は本当に変わりました。その一端にあなたたちの影響が会ったことは聞いています。教師として感謝しています」
「いいってことよ。なんというか、危うくて放って置けない娘だったからな。良い顔で笑うようになって、安心しているぜ」
ガープは杏の変化に喜びながら、車を走らせた。
「それにしても、さっきは話の途中だったが、門の神がちょっかいかけて来たって言ったが、問題なかったのか?」
「うん。いつるさんのスーパーギャラクシー流でけちょんけちょんだよ。俺も追撃で全力で股間を二回蹴ってやったし、身体を消し飛ばしたから今ごろ気持ちよくなってるんじゃない?」
「気持ちよくはなれねえだろう。というか、身体を消し飛ばしたって、殺してないのか?」
「手応えはなかったから、分身とか分体とかよくわからないけどそんなのじゃない?」
「お前は前の門の神を、その写し身ごと本体を殺しちゃったけどな!」
「ギャラクシー河童勇者ですから、きりっ」
「自分できりって言うな! ……今回は殺せなかったんだな?」
「うん、反射で消し飛ばしただけだから」
バックミラー越しにガープが夏樹に呆れた顔を向けた。
「反射って……そんなつい、で殺せるほど門の神の写し身はモロくないんだがな」
「常々考えていましたが、夏樹くんは人間でありながらあまりにも力が強力すぎますね。よかったら魔力を封じる神具をお貸ししましょうか?」
「…………壊しても怒らない?」
「今の話はなかったことに」
「ひどい! 冗談だったのに!」
「すみません。正直、あ、壊れるなって思ってしまったので無理です。普通はまず壊れないと思いますが、万が一壊れたら多方面から私が叱られます!」
夏樹だって、力は制御している。
特に、聖剣だった星子さんが本来の星槍の姿を取り戻し、片割れだった菜々子さんと合流したことで、夏樹とつながりを保ちつつも離れていられるようになった。
また星子は夏樹の制御装置の役割も担ってくれているので、星槍なしでは全力は出せない。
これは、周囲への被害に配慮したものではなく、夏樹が力を使いすぎて自爆しないためだ。
星子さんたちの制御を抜きにして、夏樹も頑張っている。
「知り合いに、壊しても構わない神具をもらってきますから、それまで待っていてください。夏樹くんたちが自衛するに全力を出すことを止めはしませんが、まだあなたの肉体には強すぎる力は毒ですよ。いずれその身を蝕み、命を落とす可能性だってあります。どうか、お気をつけください」
「――ありがとうございます」
月読の心配に、感謝した。
夏樹だって死にたいわけではない。
死なないために戦っているのに、その結果、自分の力で死んでしまうのは嫌だ。
(もう少し力を制御するか、もっと力を使いこなせるようにならないとねぇ。死にたくないし……あ)
「せ、先生、ガープさん、あの」
「なんですか?」
「なんだよ?」
「力がどうこうで死ぬ前に、連絡もなくこんな時間に帰ることでお母さんに殺されそうな僕のために、月読先生とガープさんをしつこいナンパから助けたせいでこんな時間になっちゃったってことで口裏合わせしてくれませんか!?」
「……さすがにそれは」
「無理があるだろ!」




