46「絶対的な自信がある時こそ失敗しね?」②
門の神はまるで蹴り飛ばされたサッカーボールのように飛んだ。
そのままどこまでも飛んでいけそうだった瞬く間に、いつるが門の神の足を掴み、地面に叩きつける。
「おかわりだオラぁあああああああああああああああああああああああ!」
ベストポジションに戻ってきた門の神の股間を、夏樹が再び蹴り上げた。
今度は逃さないと言わんばかりに、力を込めた爪先で抉るような的確な蹴りだった。
「――――――――――――――――」
神だろうと魔族だろうと、構造が人と変わらないのであれば痛みも同じようにやってくる。
股間を蹴り上げられた痛みに悶絶することもできず、視界が白くなったまま動けない門の神は、地面に戻ってくると呼吸もできずその場で痙攣した。
「ギャラクシーな力を感じ取ったと思ったら、またお前か! なっちゃん、今日はイベントたくさんあってよくわかんない神様に絡まれて大変だったのに、まだ休ませてくれないの!? お前みたいな独善的な奴しかいないから地球から争いが消えないんだよ!」
「夏樹くん、夏樹くん、落ち着きなさい」
「あ、いつるさん、こんばんはー!」
「はい、こんばんは」
ふう、と落ち着きを取り戻した夏樹が額の汗を拭う。
ここにいつると杏がいることはわかっていた。
「――お兄ちゃん!」
「かぱー!」
「杏さん、河童さん……え?」
夏樹は目を疑った。
駆けてくる杏と河童さんたちは、土に汚れていた。
杏に至っては、制服に靴跡がついている。
彼女が何をされたのかすぐに理解した夏樹は、魔力を解放した。
「――神鳴りの剣」
何も考えず、何の躊躇いもなく、刹那的に門の神を消し飛ばした。
「杏さん、河童さん、何をされたんだ!」
「お兄ちゃん!? 逆だよ!? 聞く前に攻撃してるよ!? 普通、逆だよね!? 杏たちがされたことを聞いてから攻撃だよね!? 相手を消し飛ばしてから尋ねられても杏困っちゃうんだけど! というか、消し飛ばしちゃったの!?」
目を丸くする杏と河童さんに夏樹はヒールをかけた。
「何があったのかよくわからないけど、無事で良かった」
「うん。河童さんたちが守ってくれたの」
「――っ、さすが河童さん、神々しい存在だというのに下々の者にも情け深い!」
「そんなことないかっぱー」
「逆に杏ちゃんにたすけられたかっぱー」
「っぱー」
「いつるさんがきてくれなかったら、杏たちはどうなっていたか……ありがとうございました」
「ありがとうかっぱー」
「ありがとうっぱー」
「あっぱー」
「いえ、お気になさらず。ギャラクシー流の使い手として、あのような輩は許せません。それに、お仕置きはしましたが、殺したわけではありません」
「――え?」
夏樹も感情に任せて門の神を消し飛ばしたが、殺した感覚はなかった。
あくまでも、この場にいた肉体は仮初のものだ。
おそらく先代門の神と同じように、保険をかけていたのだろう。
残念だが、本体まで斬った感覚はなかった。
門の神なりに学習し、対策をしていたのだろう。
「しばらくちょっかいは出せないでしょう」
「それよりも、何があったの?」
「――それはこちらの台詞です。ぜひ、私にも教えてください」
「あ、やべ」
背後から聞こえてきた声に、夏樹は嫌な汗を流した。




