43「美味しい話ほど怪しいものはなくね?」①
「――河童さん!?」
突然、河童さんたちが割って入ってきたことに、思考の渦に飲み込まれていた杏が正気に戻る。
「河川敷はおいらたちのシマだかっぱー」
「そんなところで杏ちゃんが悪い男にナンパされていると知ったら我慢できなかったかっぱー」
「こんな胡散臭い奴の言うことなんて聞いちゃだめだかっぱー!」
「そう、だよね。そうだよね。なんで、信じちゃったんだろ。過去を変えるなんて、そんな都合のいいことなんてできるはずがないのに!」
杏は目を覚ました。
罪の意識を突いてきた門の神の甘言を、河童さんたちの助けがあったものの、己の意思で振り切ったのだ。
「あー、だる」
はっきりと門の神の態度が変わった。
同時に、杏の前に立ち手を広げる河童さんの腹部に思い切り蹴りを入れた。
蹴り飛ばされた河童は杏が受け止めた。
「そういう鬱陶しいことしないでくれる?」
門の神が苛立ちを隠せず、再び河童さんを蹴ろうとした。
杏は反射的に河童さんたちに覆い被さり、代わり脇腹を蹴られてしまう。
「――っ、く、あ」
「杏ちゃん!」
「僕たちのために」
「ごめんかっぱー」
「いいの、助けてくれてありがとう。でも、早く逃げて」
門の神の足を掴んだ杏が河童さんたちを逃す。
杏の足手纏いにならないように、悔しげな顔をして逃げていく河童さんたちの姿を確認して、ホッとする。
だが、すぐに杏を痛みが襲った。
次は背中だった。
門の神に思い切り踏まれたのだ。
「わっかんないなぁ。河童みたいな雑魚妖怪を身を挺して庇えるのに、パパの辛かった過去をなかったことにしてあげようとは思えないんだ。杏ちゃんって、薄情ものだね」
「杏は、お前のことなんて信じないもん! 杏にとって都合のいいことが起きるなんて思わないもん! 仮に奇跡が起きたとしても、過去に戻ったら逃げだもん!」
「――うっざ」
門の神の足が杏を踏みつけ、蹴り上げた。
杏はしがみついていた門の神の足に思い切り噛みつく。
門の神の顔が、痛みと怒りに歪んだ。
「……杏ちゃんさぁ、こっちが優しく接しているからって調子に乗るなよ?」
門の神が杏の髪を掴み、強引に引っ張る。
髪が抜ける音がしたが、杏は決して噛むのをやめなかった。
このまま足を食いちぎってやると、むしろ顎に力を入れる。
「ああ、もういいや! うざいから、死ねよ!」
神力を込めた拳で杏を殴り飛ばそうとした門の神の腕を、背後から誰かが掴んだ。
「――なんだ!? 今度はどこの河童――だ?」
「――ギャラクシー斬り」
女性の声が響くと同時に、門の神の腕と血が宙を舞った。
門の神の絶叫が響くと同時に、杏が足から口を離してしまう。
その瞬間を待っていたように、長い足から鞭のような蹴りが繰り出され、門の神が吹き飛び河川敷を転がっていく。
「……見事なガッツでした。あなたからとても素敵なギャラクシーを感じました」
杏を助けたのは、ギャラクシー流の使い手であるいつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星だった。




