26「これ以上ない助っ人じゃね?」①
「――お見事です。ツッコミの勇者と聞いていましたが、魔眼持ちだったとは。奇しくも私と同じ魔眼を持っているとは、これも何かの縁かもしれませんね」
「言っておくが、魔眼持ちの千手さんがツッコミ担当になっちゃったってだけであって、ツッコミがメインじゃねえよ!」
魔眼の勇者を名乗る柏原保は、千手の魔眼を見逃さなかった。
停止してしまった斑目ぱおんに近づくと、興味深そうに硬直している少年を見ると、軽く叩いた。
「――動きなさい」
「――――っ、ぷはっ。この野郎! 保さんと同じ様な能力を持ちやがって! ツッコミの勇者のくせに!」
千手は保への警戒心を上げた。
敵対しているとはいえ、戦い慣れていない子供を半永久的に停止させることは良心からできなかった。そのため、数時間ほどの停止をかけたのだが、保によって強制的に解かれてしまった。
それも、あっさりと。
「……魔眼の勇者って名乗るだけあるってことか」
「あなたも力を緩めて魔眼を使ってくれましたからね」
「――ちっ」
正直なことを言えば、「停止」を強制的に解かれたのは初めての経験だった。
由良夏樹のような規格外の力を持っているので、停止が効かなかったことはあるが、それでも例外だ。
格上の新たな神々でさえ「停止」させることができるというのに、こうも簡単に解かれてしまうとは思わなかった。
(――強いのはわかっているが、厄介でもある、か。面倒臭えな)
「きひひっ」
「――――っ」
保を警戒しすぎていたせいか、廃工場の入り口に誰かがいた。
「やあ、まさか君まで来るとは思いませんでした」
「くはっ、どうせお前は勧誘といいながら茶の誘いみたいなことをしているだろうと思ってな。俺が来てやったぜ。この帝国子爵、守谷盛夫様がよぉ!」
金髪を逆立てた青年が、身につけたシルバーアクセを鳴らしながら近づいてくる。
十八歳くらいだろうが、言動のせいか幼く見える。
しかし、斑目ぱおんに比べて、力を感じ取れた。
(三人目か……何人いやがるんだ。さすがに、二対一だと面倒臭えな)
「盛夫っ、てめえ! 保さんになんて口の聞き方を」
「そりゃこっちのセリフだ、ぱおん。年上に舐めた態度とりやがって、そもそもこんな雑魚に動きを止められるとか、ダサすぎだろ! 俺だったら恥ずかしくて切腹するぞ!」
「うるさい! まだ本気出していなかっただけだ!」
「お前みたいな奴が戦場で最初に死ぬんだよなぁ。きひひっ」
新たに現れた青年――守谷盛夫の態度は、あまり仲間に対するものではなかった。
その証拠に、斑目ぱおんが噛み付いている。
「……虎童子、いけるか?」
「今、来たのと、ぱおんは問題ないと思うんだけど、あの眼帯と包帯の痛々しい奴はちょっとわかんない」
「……だな」
虎童子も千手と同じく保のことを警戒していた。
このまま戦うことが最善かどうか悩ましい。
相手は三人。
能力は未知数。
ひとりは、明らかに格上だ。
(――さて、どうするべきか。三原が誰かに連絡してくれているのなら、そろそろ助っ人が来てくれるはずなんだが)
「やめなさい、ぱおん、盛夫。彼は我々の仲間になるべきツッコミの勇者なのだから」
「……すみません」
「――は? ツッコミの勇者って、マジか!?」
「そうだよ。彼はツッコミの勇者だ」
「いやいやいやいやいやいやいや! ないだろ! ツッコミの勇者ってなんなんだよ! 百歩譲ってツッコミの勇者がいたとして、そんなのを仲間にしてどんな役に立つっていうんだ!?」
盛夫の叫びは、至極真っ当だった。
そもそも、千手はツッコミの勇者ではない。
「私には彼の力がわかります」
「その自信はどこからくるんだよぉ。まあ、いい。とりあえず、あの鬼を殺すのは決定事項なんだろう?」
「ええ」
「んじゃ、その後でじっくりツッコミの勇者の力を見せてもらおうじゃねえか」
盛夫が明確な敵意を虎童子に向けた。
千手が反射的に前に出て庇う。
「きひひっ、人間を鬼が守るとかくそウケるんだけど!」
「なら死ぬまで笑ってろ」
千手が盛夫を睨みつけた時だった。
廃工場の分厚い扉が何者かによって吹き飛ばされた。
扉が地面を跳ねて轟音を立てた。
「何者かな?」
保が片目を細めて、廃工場の入り口を見た。
「――まもんまもん」
「――ぱぱんぱぱん」
「――ひしょひしょ」




