25「逆に弱いとホッとするんじゃね?」
先日、北海道から東北地方にかけて大きな地震がございました。
本日もまた大きな地震がございました。
その地域に住まう皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
まだまだ油断できない日々が続くでしょうが、お身体にはくれぐれもお気をつけください。
「……だ、ダーリン、ぱおんて」
「笑うな。そういう空気じゃねえ」
「……ううん、笑えないっていうか、虎童子なんか割とないなーって思っているのに、まだ上には上がいたというか、親の顔を見てみたいじゃん」
「……俺の千手っていうのも、ちょっと尖っている感じはするんだよなぁ」
千手と虎童子は、目の前の勇者を名乗った少年の名を聞き驚きはしたが、笑えなかった。
正直、笑う前にかわいそうと思えてしまった。
世の中にはキラキラネームが割とあることは知っている。漢字で書くと意外とかっこいいのに、口にすると大変な発音のものだって多い。
「あんだよ! 笑えよ! どうせお前もぱおんのぱおんがぱおんしているとか言って俺のことを笑うんだろ!」
「そんなこと言わねえよ! 中坊じゃあるまいし!」
「……とらぴー、笑えないっていうか、なんか笑い飛ばしちゃった方がいいと思うんだけど、ごめんね」
「謝るなよ! 自分でとらぴーとか言う痛々しいやつに謝られると、悲しいだろ!」
ぱおんが地面を蹴った。
彼の手にはいつの間にか無骨な両刃剣が握られていた。
「おっと」
「あいよっ、と!」
名前に関してはおいておくとして、戦う気なら応じるまでだ。
千手は軽やかに迫り来る白刃を交わし、ぱおんの肩を掴んで一回転し、背後に回り込んだ。
同時に、千手に続いて虎童子が拳を豪快に振るう。
鬼の剛腕から繰り出された拳は、容易くぱおんの持つ剣を叩き砕いた。
「――くそっ……なんていうわけないだろ!」
砕けた剣を捨てると同時に、新たな剣がぱおんの手に握られていた。
「ちょ、それズルい!」
「知るか!」
再び両刃剣を振るうぱおんだったが、速度としては大したことはない。
彼の剣にどれほどの力があるか不明だ。
簡単に鬼を傷つけることはできないはずであり、虎童子も自身の防御に自身があったのか避けるのではなく腕で防御をしようと試みたが、千手がぱおんの襟首を掴んで思い切り引っ張ったので剣は虎童子に触れることすらしなかった。
「虎童子! 受けるな、避けろ!」
「う、うん!」
「げほっ、ごほっ……このグラサン、苦しいじゃねえか、離せ!」
剣を薙ぐぱおんと千手は距離をとった。
(――勇者とは言ったが戦い慣れていねえし、命を奪ったことがない、ようだな)
攻撃に躊躇いはないので、誰かを思い切り傷つけたことはあるのだろう。
しかし、命を奪ったことはないようだ。
躊躇はないが、思い切りがない。
あくまでも死なない限りの中で躊躇いがないだけだと千手は見抜く。
裏事に関わっていると、少し手合わせすれば慣れているかどうかくらいはわかる。
斑目ぱおんは、明らかに戦いにも、命のやり取りにも慣れていない。
(由良とは大違いだ。……いや、由良が思い切りが良すぎるだけか。普通は、いくら力を手に入れたとしても、こんなもんだ)
相手が人間ではなくとも命を奪うということは、なかなかしんどい。
千手も、人に悪さをする妖怪を殺した時には、何度も吐いたし夢に見た。
人間を手にかけた時は、裏稼業専門の精神科医に通ったこともある。
(まあ、だからこそ、俺の魔眼は割と便利なんだがな)
「くそっ、どうして当たらないんだ! 僕は勇者だぞ!」
「もういい、お前は戦わない方がいい」
「なんだと!」
「しばらく――停マッテイロ」
サングラスをずらし、魔眼を発動した。
次の瞬間、剣を振り上げたまま斑目ぱおんは停止した。




