24「善人が酷い目に遭うのは理不尽だと思わね?」
斑目ぱおんは、現在――向島市とは違う場所で生活をしていた中学三年生だ。
自己顕示欲の塊のような両親から生まれ、誰かの注目を引くために育てられた。
運動ができて当たり前、勉強ができて当たり前、特技があって当たり前、学校の人気者であって当たり前であることを強要された。
無論、そんな完璧な人間はいない。
運動はできるが勉強は苦手だ。特技なんてない。人気者になんてなれるはずがない、この名前のせいでいつもイジられているのだ。
――そんな斑目ぱおんは異世界に召喚された。
いくつかの世界から複数人の勇者のひとりだった。
ずば抜けた何かがあるわけではなく、ただちょっとした力を持っているだけの少年だった。
力を得た勇者というだけで希少な存在だったようだが、勇者の中では一番ぱっとしなかった。目立つ者は龍殺しの剣や、聖剣、魔剣などを持っていたのに、ぱおんはただ鉄の剣を生み出すことしかできなかった。
唯一、幸いと言うべきだったのは、異世界の人間はすべてとは言わないが善良な人間が多かったことだ。
他世界から召喚された者たちに礼を尽くし、決して悪いようにはしなかった。
目立たぬ勇者のひとりであるぱおんにも、「鉄の剣を魔力で生み出すことができるのは素晴らしい!」と喜んでくれた。
兵士用の剣を作り出す日々を送る傍らで、親しくなった騎士に稽古をつけてもらい、剣術と魔法を使えるようになった。
しかし、成人前の子供であるということで、戦場には出してもらえなかった。
名前を馬鹿にする人間はおらず、心地よささえ感じていた世界だったが、人外たちとの戦いに何度も敗北し、少しずつ追い込まれていた。
勇者を召喚したというのに、奴らはもっと強かったのだ。
異世界での時間が二年が経とうとしていたが、勇者たちでは戦況をひっくり返すことができなかったのだ。
そこで、勇者召喚した国の王は決断した。自分たちの終焉に異世界の者を付き合わせるべきではない、と。
すでに亡くなってしまった勇者はいたが、生きている者は故郷に帰そうと考えたのだ。
ぱおんもその対象であり、大量の金貨と宝石などを持たせられて地球に戻された。
最後まで一緒に戦うと訴えた、ぱおんに感謝の言葉を述べて笑顔で送ってくれた。
――地球では時間が経っていた。
突然、帰ってきた息子に両親は喜ぶことはせず、「せっかく行方不明の被害者として注目を浴びていたのに! テレビの出演も決まっていたのに!」と罵ったのだ。
良い人たちが死んでしまうのに、どうしてこんな人間が生きているのだろうと不思議に思った。
何も言わないぱおんの態度に気がさわったのか、両親は手をあげようとして、その腕を切り落とされた。
絶叫がうるさかったので、口を切り裂き、舌に剣を突き立てた。
喚きながら残った腕を使い指を刺して何かを訴えてきたので、その指も全て切り落とした。
血溜まりに沈む両親の姿を見て、面倒臭いと思い殺そうとしたところを、力を感じ取った柏原保が現れて止められたのだ。
どんな理由はあれど、親殺しはするものではない、と。
その後、両親は一命を取り留めたが病院から出ることはできないだろう。言葉を喋れず、筆談もできず、何かを言えば次は殺すと念入りに脅しておいたので震えているはずだ。
何かしらの犯罪に巻き込まれたとして、決着がつき、ぱおんは親戚の家に引き取られることになった。
――だが、親戚の家を飛び出して、ぱおんは同じ勇者である保と行動を共にすることにした。
弱いことは罪だ。
大切な人たちを守れないことは、悪だ。
――何よりも、自分から大切な人たちを奪った人外共は存在してはいけない。
斑目ぱおんは、勇者としてこの世界の人外を駆逐することを決めた。




