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異世界から帰還したら地球もかなりファンタジーでした。あと、負けヒロインどもこっち見んな。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
十三章

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23「男の子には誰もが通る道があるんじゃね?」②





 七森千手は動揺を飲み込みながら、柏原保の話を聞き続けた。

 普段の千手なら「勇者じゃねえし!」と勇者扱いであることに全力でツッコミを入れているはずだが、今はその余裕はない。

 精神的に弱ってしまっているのだ。


 その理由は、――かつて自身が考えた最強のキャラクターと組織が目の前に現れてしまったからだ。


「まだ結成して日が浅い組織ではありますが、我々の中で最も強く、人望に厚い者を『皇帝』とし、我々が支えているのです」

「ぐぁああああああああああああああああああああ!」


 千手が胸を押さえて苦しみ出す。

 虎童子が保を睨んだ。


「――ダーリン!? お前、何をした!」

「……いえ、何も。本当に何もしていないのですが……持病でもありますか? よろしければ我々帝国の中に『聖女』の地位を持つ者がいるのですが、仲間になってくれるのであれば紹介しましょう」

「ぐっ、あぁああああああああああああああ!」


 千手はさらに苦しみ出す。

 かつて千手がノートに書いた設定では、「帝国」という組織のリーダーが「皇帝」であり、秀でた治癒能力を持つ者を「聖女」としていた。

 他にも、剣に優れている者を「剣聖」「騎士団長」、戦い全般を得意とする物を「将軍」、他にも「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」「騎士」と力によって立場を割り振ったのだ。

 すでに、「帝国」「皇帝」「聖女」が出てきてしまった。この流れであれば、続きも出てきそうで怖い。


「――さすが保さんだぜ! 何もせずに敵を苦しめるなんて! いや、違う。俺にはわかる。何もしていないと言いつつも、俺には見えない何かをしているんだ!」


 少年は保に尊敬の眼差しを送っていた。

 キラキラした瞳を向けられた保は「いえ、本当に何もしていないのですが」と困惑気味だ。


「あなたの調子も悪いようなので、話はこのくらいにしておきましょう。さすがに今、この場で我々帝国に加わることを決めるのは酷でしょう。後日、また会いにきます。その時に、良いお返事を聞かせてくれると嬉しいです。――が、そちらの鬼はここで倒しましょう」

「そうこなくっちゃ!」


 この場で虎童子だけは倒すと決めた保に、少年が喜んだ。

 力を得て使うことが楽しい、そんな印象を彼から受けた。


「ダーリン、あたいは戦うから、休んでいて」

「いや、待て。違う。別に俺は何かあったわけじゃない。いや、何かあったにはあったんだが、問題ない」


 千手は精神を落ち着かせるために電子煙草を吸い始める。

 サングラスを外して、胸ポケットに入れると、首を鳴らした。


「虎童子は手加減できないだろうから、俺が相手をしてやる。ふたりまとめてかかってこいや!」

「ダーリンっ、あたいのためにそんなにやる気マックスになって!」

「ちげえよ!」

「もう、照れちゃってかわいいー!」

「マジで、ちょっとツッコむ元気がないから、やめて」


(――とにかくこいつらを倒さなければ。倒して、組織を壊滅させるんだ。俺の黒歴史が現実になる前に、なんとかしないといけないっ!)


「鬼に誑かされた同志を救うのも我々の役目です」

「保さん、俺に任せてください」

「――いいでしょう。では、いきなさい、ぱおん」

「はい!」


 おや、と千手と虎童子が揃って首を傾げた。


「……ダーリン、今、あの男、ぱおん、って言ったよね?」

「言ったな。どういう意味だ? 急に語尾をつけたのか?」

「それはそれで痛々しいんですけど!」

「同感だ!」


 ふたりのやりとりが聞こえていなかったのか、少年は意気揚々と前に出た。



「俺が子供だからって舐めていたら殺すぞ。俺は、鉄剣の勇者にして、帝国騎士――斑目ぱおんだ!」






 ちなみに、「羽怨」と書いて「ぱおん」です。


 シリアス先輩「これはこれでシリアス案件だな! きっと、くっ、この手に宿る力が……制御できないんだっ! とか言い出すぜ、こいつ!」


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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
……なっちゃんはパソコンのシークレットファイルが全て晒されているのにツッコミの勇者は無傷なのはずるいんじゃね? って河童守護聖人勇者がおっしゃってました!
悪意のある名前だ…哀れなDQネームの被害者なのね
よかった、千手帝国にぱおんはいないだろうから、少し傷も癒されますね。
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