17「お別れと勧誘じゃね?」②
「警戒しているのだろうが、その身に秘める凄まじい力は隠すことはできない。どうか安心してほしい。私はあなたの敵ではない」
七森千手は動揺していた。
これほど動揺したのは、初めて夏樹と対峙してボッコボコにされた時以来だ。
(ツッコミてぇ、めちゃくちゃツッコミてぇ! なんだよ、ツッコミの勇者って! とか全力でツッコミてぇ! だけど、我慢だ。我慢しろ。名が割れているんだから、誤魔化すことに全力を注げ!)
しかし、腐っても霊能力者として裏稼業をしている人間だ。
動揺を表に出すようなことはしない。
「違いますぅ! 俺は七森千手なんてイケメンじゃありませーん! 八森万寿ですぅ!」
「――ダーリン、さすがにそれは無理がありすぎじゃんってとらぴー苦笑い」
千手の背後にいたのは、左目に眼帯をして、左腕に包帯を巻いた青年だった。
年齢的には千手とあまり変わらない。二十歳を少し過ぎたくらいだろう。
スラックスにシャツといったラフな格好だが、わざわざ腕まくりをして左腕に巻かれた包帯を見せつけている気がするのは何故だろうか。
「やはり、警戒されてしまうか。悲しいものだ。私もあなたも、お互いに潜在能力を隠せないらしい」
「…………違いますぅ。俺はマチュピチュからやってきた留学生ハチモーリマンジューですぅ」
「わかるよ。平穏な日々を、争いで乱されたくない。そう考えているのだろう。だけど、僕も同じだ」
「……やべえこいつ俺の話きいてなくね?」
「とらぴーもそう思った」
話を聞かない奴はだいたいやばい。
千手は年下の友人でよく勉強していた。
確かに、目の前の青年から力は感じる。かなり強い力だ。
わざとわかりやすく力を見せつけているのか、それとも隠し切れないほど強い力を持っているのかまでは千手には判断できない。
――それでも、ひとつだけわかったことがある。
――こいつは、――人間だ。
「我々は同じ境遇の仲間を集めている。なぜ、と疑問に思うだろうから、先に答えを言っておこう。我々は、新たな神々と敵対している。ふっ――違うな。我々は、古き神々とも、魔族とも、そしていずれ人類とも敵対するだろう」
「あ、これやばい人だ」
「我々は、勇者だ。選ばれし、存在だ。わかるね? ――さあ、七森千手。ツッコミの勇者。我々のもとへ来てほしい」
(――あ、やべ。こいつら新たな勢力だ。……なんで俺のところにくるのぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? こういうのって由良のところに行くんじゃないのぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ていうか、俺は勇者じゃねえよ! つーかツッコミの勇者ってなんだよ! もっと違うのなかったのかよ! せめて魔眼の勇者とか言ってよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)




