16「お別れと勧誘じゃね?」①
そろそろお昼を迎えようとしていた由良家では、七つの大罪の魔族にしてまもんまもん系インフルエンサーであるマモンが出立の時間を迎えていた。
「お世話になりまもんまもん」
「……あ、うん。帰ってくれるのは構わないし、むしろ大歓迎なんだけど、一応聞いておくけど飯食ってから帰らねえの?」
「これから蓮がまもんまもんとお世話になっているお店でご飯食べてから、帰るでまもんまもん」
「……そのくらいならいいけどさ」
「さまたんには魔王に無理やり攫われたと言い訳をしておきたいでまもんまもん」
「ふざけんな! 俺のせいにするんじゃねえよ!」
帰路に着こうとしているマモンだが、青森でさまたんに怒られるのは嫌なようだ。
もちろん、さまたんは青森でお怒りであり、今か今かとマモンの帰りを待っている。
「一宿一飯のまもんまもんもあるゆえ、アドバイスをしておくでまもん」
「……俺に? なんだよ?」
「分不相応な恋愛はするものではないでまもんまもん」
優しい瞳を向けてマモンはサタンの肩をぽんと叩いた。
だが、すぐに払われてしまった。
「JKと婚約したお前にだけは言われたくねえよ! 分不相応とか言うな! 涙が出ちゃうだろう!」
「仮にも娘と同居しているのに、まもんまもんと鼻の下を伸ばして……こんなのが魔王だからこそ、まもんまもんと反旗を翻したくなるのでまもんまもん」
「知るか!」
「覚えておくといいでまもんまもん。このマモンを倒しても、第二、第三のまもんまもんがまもんまもんとまもんまもんしてくるでまもんまもん!」
「後半! 後半わからない! なになに!? またお前みたいにやらかす奴が準備中なのか!? それとも単純にまもんまもん言う奴がふえるのか!?」
「まもん?」
「お前が言い出したのに、何を言っているのかわからねえみたいな顔をするんじゃねえよ! もういいよ! 早く帰れ!」
追い払うように手を振ると、マモンがサタンに背を向けて歩き出す。
「なっちゃんに伝えておいてほしいでまもんまもん」
「おい、急に距離詰めたな」
「――まもんまもん、とな」
「俺が伝えたところでまもんまもんはまもんまもんなんだが、本当にいいんだな!? マジでいいんだ!? こっち向けよ、親指立てんな! うぜぇええええええええええええええええええ!」
振り返らずに親指を立てながら歩みを止めないマモンは、どこまでもマモンだった。
――この後、マモンが蓮の働く姿を見て号泣していると、シンパシーを感じた七森康弘に声をかけられたことがきっかけでズッ友になるのだが……それはまた別のお話。
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――そして。
「ねえねえ、ダーリン。おーなーかーすーいーたー!」
「…………まだ準備中だろ。お前が待つのもアリっていうからわざわざ連れてきてやったんだから、我慢しろ。はぁ、マジでそろそろ車買おうかな」
イタリアンレストランの前で並んでいる七森千手と虎童子に忍び寄る者がいた。
「――七森千手」
「あん?」
「いや、ツッコミの勇者と呼んだ方がわかりやすいだろう。我々のもとに迎えに来た」
「あ、人違いです」




